感染が少し収まった5月19日には、雅子さまが明治神宮会館(東京都渋谷区)で開かれた全国赤十字大会に出席した。皇居外での単独公務は約3年ぶりで、各メディアも大きく報じた。6月27日には陛下と雅子さまが、日本学士院会館(東京都台東区)での公務に。が、このところの感染急拡大で、外出もいつまで続くかわからない。
そんなタイミングでの写真の公表だ。それもテーマは皇室の伝統である養蚕で、カジュアルな写真。絶妙な広報だと思う。
養蚕には、生物と向き合う温かさがある。「御養蚕始の儀」では豊作を祈る神事もあるなど「これぞ皇室」という側面もあるが、人となりが見えてくる行事でもある。
代替わり直前、詩人の吉増剛造さんが美智子さまの詩心について「皇后陛下がお作りになる蚕の御歌も素晴らしいものです」という言葉を寄せていた(「文藝春秋」19年5月号)。1997年に出版された美智子さまの歌集『瀬音』には、「養蚕」を詠んだ歌が9首収められている。得意な御歌と養蚕が結びつき、美智子さまらしさが国民に伝わっていた証しだと思う。
同じように養蚕から雅子さまらしさが見えたのが、6月2日の朝日新聞デジタルの「生物クラブだった雅子さま カイコも素手で」という記事だ。
生物好きのお二人
小学校時代、生物クラブに入っていた雅子さま、同じく生物好きで小学生の頃から蚕を育てていた愛子さま、お二人の話に加え、宮内庁関係者のこんな言葉が紹介されていた。
「皇后さまは、今どきの方には珍しく、カイコを手で触られるので、お好きなことがよく分かる。丁寧に作業をしておられるので、愛子さまにもそのような姿勢が伝わっているのでは」
雅子さまと愛子さまと蚕。明るい光景が目に浮かぶ。やはり養蚕は、しみじみ広報に向いている。となれば宮内庁、もうあと一歩だ。公表した養蚕の写真をSNSにあげる。ごく簡単な話だと思う。
先述した代田さんの言葉、「ネットにアップしたいくらい」が全てだと思う。ご一家の仲睦まじさを伝えたいための何げない一言が、SNS時代を表している。今や誰でも、いいことがあったらネットにアップが常識。英国王室もそうだ。