宮内庁は「ご家族での養蚕写真」を公開した。英国王室とも比較しながら、独自の視点で皇室の広報のあり方を考える。AERA 2022年8月1日号の記事から。
【写真】沖縄復帰50周年記念式典にオンラインで出席した天皇、皇后両陛下
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宮内庁が7月14日、天皇陛下と雅子さま、愛子さまが皇居内の紅葉山御養蚕所で養蚕に取り組む写真を5点、公開した。
歴代皇后が受け継ぎ、雅子さまも2020年から取り組んでいるご養蚕だが、陛下と愛子さまが参加したのは今年が初めて。カジュアルな装いで、いつもと違う素顔のご一家が写っている。
日本テレビはこのニュースで、紅葉山御養蚕所元主任の代田丈志さんに話を聞いていた。「非常に和やかで楽しそうですし、カメラに撮って私がネットにアップしたいくらい。すごくいい家族だなと」と代田さんはニコニコと語る。見ているこちらもニコニコ顔になってくる。
「インスタで見たい」
同時に激しく共感したのが、「ネットにアップしたいくらい」という言葉。陛下のボタンダウンのシャツ、雅子さまのダウンベスト、愛子さまの可愛いブラウス……この写真、インスタグラムで見たい! と思うのだ。
というわけで、「天皇ご一家と蚕とインスタと」という話を書かせていただく。
そもそも皇室における養蚕は1871年、昭憲皇太后から始まる。雅子さまへバトンタッチした美智子さまはとても熱心で、『皇后さまの御親蚕』(04年刊)、『皇后さまとご養蚕』(16年刊)と2冊の本も出ている。『皇后さまとご養蚕』からは、美智子さまもご家族と一緒に養蚕に励んでいたことがわかる。
小学校3年生だった眞子さま(現在の小室眞子さん)宛ての「眞子様へのお手紙」が中に収録されていて、「眞子ちゃんは、ばあばがお蚕(かいこ)さんの仕事をする時、よくいっしょに紅葉山(もみじやま)のご養蚕所(ようさんじょ)にいきましたね」などとある。だが、美智子さまの養蚕に関する写真は単独のものばかり。「皇后が受け継いでいく伝統」だからかもしれない。
その意味で今回公表された「ご家族での養蚕写真」は前例がないもので、そこに宮内庁の「広報戦略」が感じられる。新型コロナウイルスのせいで遠くなってしまった「国民との距離」。それを取り戻そうという作戦に見えるのだ。
皇室報道に危機感
コロナ禍も3年目になり、陛下と雅子さまの公務は皇居からの「オンライン出席」や「オンライン視察」がデフォルトになった。そしてこの間の皇室報道は眞子さんの結婚問題ばかりが目立ち、宮内庁にも危機感があるのではないだろうか。