■両国の大統領に物が言える立場
──自民党の佐藤正久・外交部会長は「北海道に中距離ミサイルを配備すべき」という趣旨の発言をしています。
「政治の究極の目的は世界平和なのです。防衛力だけ増強してもダメです。やはり、外交による対話を続け、信頼関係を結んでいくしかありません。日米同盟は大事ですが、日本は米国とだけ付き合っていれば生きていけるというものではない。日本には『遠くの親戚より近くの他人』という諺があります。個人であれば嫌な人が隣に来たら、引っ越せばいい。しかし、国の場合、そうはいきません。ロシアも中国も韓国も北朝鮮も、日本にとって隣国なのですから、折り合いをつけるしかありません。お互い未来志向で信頼関係を築いていく。それこそが、政治の役割なのです」
──北方領土交渉は今後どうなりますか。
「まずはウクライナでの戦争を一刻も早く終わらせ、その出口を見据えて考えていくしかない。そのためにも、ロシアとのパイプを断ち切ってしまうべきではありません」
──日本はどう対処すべきですか。
「例えば、先の大戦で日本が半年早く和平、降伏に応じていれば、東京大空襲も沖縄戦も広島、長崎に核兵器が使われることもなかったと思います。戦争が長引けば、子どもや女性、お年寄りたちの犠牲が増えるばかりです。日本は非友好国にされる前はロシアとの関係は良好でした。ウクライナには05年から現在までで約3100億円の経済協力をしています。ですから、日本はプーチン大統領にも、ゼレンスキー大統領にも物が言える立場です。だから『ここは銃を置け』と呼びかけるのです。ロシアと良好な関係にある国も加盟しているG20の枠組みで停戦を求め、日本の岸田首相が保証人になるくらいのリーダーシップを発揮してもらいたいと思っています」
(聞き手 本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2022年6月17日号