坂倉さんによれば、実践的なアドバイスとして(1)証拠を集める(2)いったん会社を休む(3)社外の専門家に相談する──の3点が重要だ。

「まず、証拠がないと会社や加害者側にいじめの事実を認めさせるのはかなり難しい。メールやチャットなどSNSで被害を受けた場合は、パソコンの画面をスクリーンショットして保存する。特に効果があるのが録音。相手の同意がなく録音しても、証拠として使えます」

職場のいじめやハラスメントの専門家がいる主な相談窓口(AERA 2022年6月13日号より)
職場のいじめやハラスメントの専門家がいる主な相談窓口(AERA 2022年6月13日号より)

■社外の専門家に相談

 いじめられてメンタルが壊れているときは会社を辞めることも重要だ。だが、辞める前に「会社を休む」という選択肢を考えてほしいと助言する。

「いきなり退職すると収入が途絶え、生活が困窮します。辞める前にまず休むことを考えてください。辞めたいとまで追い込まれている人は、精神疾患を発症していると診断される可能性が高いので、そうすると健康保険の傷病手当を最大で1年半もらい続けることができ、その間に仕事を探したり、心身を休ませたりすることが可能です」

 そのうえで、社外の専門家への相談を勧める。

「パワハラ被害に遭っていると、まず会社の相談窓口を思い浮かべるかもしれません。しかし、会社は利益の追求を目的とする組織なので善意で動いてくれません。相談しても無視され、翌日に上司から怒られるというケースは数多くあります。会社に頼るのは『幻想』ぐらいに考えておいたほうがいいと思います」(坂倉さん)

 実際、21年公表の厚労省の「職場のハラスメントに関する実態調査」では、パワハラを知った後の勤務先の対応として約47%が「何もしなかった」と回答した。

 社外には、個人でも入れるNPOや労働組合があり、相談に乗ってくれる弁護士たちがいる。

 坂倉さんは言う。

「個人個人が声を上げることで職場が変わり、社会の風潮も変われば、いじめやハラスメントをなくすことにつながります」

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年6月13日号より抜粋

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