──ロンドン五輪のときに、ダニエル・クレイグの007と女王が共演した映像も入っています。
「あれも許諾まで大変だったね。入らなかったら残念だったろうな。ロジャーと僕はダニエル・クレイグと2本ほど映画を作ったことがあってダニエルとは友人なので、入れることができたんだ」
──ところで全体的にユーモアもふんだんに織り交ぜていますが、この意図は?
「参考文献的な雰囲気になるのを避けたかった。女王への敬意を保ちつつ、ちょっとしたいたずらっぽさも入れて愛嬌のある内容にしたかった。本作はロジャーの遺作となったが、彼のすべての映画に共通する点は、機知とユーモアを忘れず真実を人道的に語るところだよ。特に僕と一緒に作った映画は。この映画を観てもらえばわかるけれど、女王も非常にユーモアのある人だ。女王と仕事をしたことのある人は、みなそう言うよ。女王陛下として任務をこなすためには、ユーモアが必要だと思う。数えきれない人と公の場で会わなければならない日々で、気持ちがついていかないときだってあるはずだ。それを乗り切るにはユーモアが必要なんじゃないのかな」
(在ロンドン 高野裕子)
※週刊朝日 2022年6月24日号