「エリザベス 女王陛下の微笑み」 17日からTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国公開(c)Elizabeth Productions Limited 2021
「エリザベス 女王陛下の微笑み」 17日からTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国公開(c)Elizabeth Productions Limited 2021

 映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」は25歳で即位した女王の70年にわたる歩みを記録映像で綴った出色のドキュメンタリーだ。本作完成後に急逝したロジャー・ミッシェル監督の親友でもあるプロデューサーのケヴィン・ローダーに聞いた。

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 6月2~5日、英国ではエリザベス2世の在位70年を祝し、各地で盛大なイベントが開かれた。本作は、御年96のいまも国民からの人気に衰えを見せない女王を、さまざまなテーマから全方位に見つめ、存在の意味を考えさせる独創的な内容だ。

──本作の発想はどこから出てきたのですか?

「ロックダウンのとき、スタジオが閉鎖され従来の映画作りができなくなったので、ロジャーが記録映像を使ったドキュメンタリーを発案したんだ。実は当初、僕は乗り気じゃなかったんだ。女王についてはすでに多くのドキュメンタリー作品があるから。でも、ロジャーは時代を順に追うのではなく、インタビューもせず、記録素材や写真、音楽を使って女王陛下と当時の時代背景、社会背景を織り込みながら表現したいと言った。記録映像を使ったドキュメンタリー制作の場合、素材量の多寡が重要になるが、今回その問題はなかったよ、90年分の素材があったから(笑)。本作で使用した最古の映像は、90年以上前に撮影されたものだよ。驚異的だよね」

「エリザベス 女王陛下の微笑み」 17日からTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国公開(c)Elizabeth Productions Limited 2021
「エリザベス 女王陛下の微笑み」 17日からTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国公開(c)Elizabeth Productions Limited 2021

──素材となる記録映像を見るだけでも長い時間がかかったのでは?

「2020年の9月に見始めて翌年の9月まで、資料映像を見るのにも映画の構想を練るのにも1年かかった。たとえば『モナリザ』というテーマを設定したとしたら、さらにモナリザについて調べなければならないので時間が必要だったんだ」

──いろいろなテーマから女王へアプローチしていく構成は、いかにして生まれたのですか?

「記録映像を見ながら、馬、第2次世界大戦、フィリップ殿下、映画や劇場の舞台裏訪問などの多くのテーマを決めた。一度『馬』というテーマがあがると、女王と馬の映像はほかにないのか探してもらった。同様に首相と握手している映像とか、イギリス連邦に関する映像とか、民族舞踊を見ている映像、といったように……。それに沿って章立てを考え、骨組みを決め、肉付けして更に音楽をつけていった。90分間で、どうテーマをつなげていくかが問題だった。時代順ではなく、観た人が旅をするような形にしたいとロジャーは言った」

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