日本では80歳になっても自分の歯を20本以上残そうという国民健康運動、「8020(ハチマルニイマル)運動」に取り組んできました。結果、2016年にようやく、5割の人が目標を達成しましたが、スウェーデンではすでに8割以上が達成しているそうです。

 日本人が歯の予防にあまり熱心でないのは、公的な保険が充実しているからではないかと言われています。歯の治療のほとんどには、健康保険が使える。安くすむので、発症してから治療を受ければいい、となるわけです。

 一方、こうした話題になるときにしばしば比較されるのが、アメリカです。アメリカ人は治療ではなく、予防のために歯科にかかることが一般的で、セルフケアにも熱心です。ライオン(株)の調査(2014年発表)によると、デンタルフロスの使用率は約60%、日本の19.4%とは比較にならないくらい多いのです。背景には歯科治療は日本と違い、すべて自己負担ということがあります。例えば進行したむし歯におこなう歯の神経の治療を受けるのに1本10万~15万円くらいかかります。

 政府がここにきて歯の病気の予防に前のめりになっているもう一つの理由は、歯の病気がからだの病気に深くかかわっているというエビデンス(科学的根拠)がたくさん出てきたこともあると思います。

 問題となる歯の病気の代表は、このコラムでも、繰り返しお話ししてきた歯周病。日本人の約8割がかかっている病気です。心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病、肥満や誤嚥(ごえん)性肺炎、認知症等、歯周病が引き金になって起こる数多くの全身病が明らかになってきています。

 口の中の血管に入った歯周病菌が全身の血管から、さまざまな臓器にまわることが原因と考えられています。

 からだの病気のうち、特に糖尿病についてはわかってきたことがたくさんあり、重症の歯周病があると糖尿病が悪化すること、逆に糖尿病があると歯周病が悪くなることがわかっています。

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歯周病と認知症との関係も