プロ野球でノーヒットノーランが今季4度達成される異例の事態となっている。3割打者の数もセ・パ各リーグで減少傾向にある。今季はなぜ快挙が多いのか、理由を専門家に聞いた。AERA 2022年7月4日号の記事を紹介する。
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プロ野球で投手の快挙が続いている。オリックスのエース・山本由伸(23)が6月18日の西武戦で無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)を達成した。通算86人目、97度目。今季では、4月10日のロッテ・佐々木朗希(20)=完全試合=、5月11日のソフトバンク・東浜巨(なお、32)、6月7日のDeNA・今永昇太(28)に次いで4人目となる。1シーズンに4人達成は1950年の2リーグ制導入以降で最多だ。
これ以外にも記録には残らないが、佐々木は4月17日に八回まで一人の走者も許さないまま降板。中日の大野雄大(ゆうだい、33)は5月6日に九回まで「完全試合」(延長十回に被安打)の快投を演じた。
ノーヒットノーランは36年に巨人の沢村栄治(故人)がプロ野球史上初めて達成して以来、平均すれば昨年まで1年に1度ある程度だった。今季はなぜ多いのか。「投手の球速が全体的に上がったこと」を理由に挙げるのは、筑波大学体育専門学群准教授で野球の投球動作、打撃動作やゲーム分析も行っている川村卓さん(52)だ。
■今の基準は150キロ
「15年前までなら『球が速いかどうか』の基準は140キロでした。いまは150キロ。当時とは測り方も異なり比較は難しい面もありますが、トレーニング方法など知見の蓄積もあり、数キロ単位で上がっていることは間違いない。その変化に打者が追いつけていないという面がまずあると思います」
「ボールの質が変わった」と見るのは、元阪神のエースで解説者の池田親興(ちかふさ)さん(63)。質とは、2011年から公式戦に採用された統一球のことだ。
「私が現役の頃は、球団ごとに異なるボールを使っていました。縫い目や革など一個一個握った感触が違い、ボールの回転や変化の仕方も変わってしまう。私も『この球場だとあのボールなので嫌だな』というボールがありました。どれを触っても同様にクオリティーの高い統一球は、投手にとって最高に使いやすいはずです」