■名前を剥がしたい
GOTOさんが撮影している地球の一部や、内部をのぞいたような造形にはもともと名前はなく、意味もない。
「人間はそれに名前をつけてしまいますけれど、そこから外れて見たほうがより自然にアプローチできるんじゃないか、と思っています」
意外に思われるかもしれないが、GOTOさんは普段、撮影に通っている場所の一つに富士山を挙げる。
ただ、富士山の全景が写っていると、それを見る側の想像に委ねられる部分はほとんどなくなり、説明に近い写真になってしまう。だから、それはやりたくないという。
「誰もが『富士山』と聞けば、あの形を想起するように、名前にはそういう意味づけの強さがあります。だから、写真を撮るときは、そういう名前を剥がしたい。意味づけをゼロにはできないですけど、それを『外す』、ということを試みています」
さらに、「写真家は、写真を『撮るとき』と『選ぶとき』の2回、選択のチャンスがある」と言う。
ただ、写真を選ぶ際、「これを人が見たら喜ぶだろうな」と、人の視線を気にしてしまうと、どんどん「やさしい写真」になってしまう。もちろん、クライアントがいる場合もあるので、なかなかそのへんのさじ加減は難しい。
ちなみに、「今回の作品は、『誰かが喜ぶ』ということよりも、まず、『自分が驚けるか』を基準に選びました。だから、既視感のあるものは排除しています」。
■「絶景」では見えないもの
ここ最近、「絶景」という言葉がもてはやされてきた。
「確かにわかりやすいし、お金になるのかもしれないですけど、『絶景』と言った時点で、ある種の枠にカテゴライズされてしまって、そうでない部分が見えてこなくなってしまうところがあります。そのへんに転がっている石や岩であっても、よーく見ていくと、人間の一生よりも長い時間が流れるうちにできた造形がある。そこに地球の、惑星としての息吹が感じられる。そういったところに目を向けていきたい、という気持ちがあります」
(文=アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】GOTO AKI写真展「event horizon-事象の地平線-」
コミュニケーションギャラリー ふげん社 6月17日~7月11日
GOTO AKIさんと写真家・佐藤信太郎さんによるギャラリートークを開催。6月19日14:30から写真展会場とオンラインで。参加チケット(1000円)はふげん社オンラインストアで販売