なかでも「20年で社会的評価が高まった大学」という指標で早稲田大が優位になっている理由について、安田常務は「この20年の早稲田大の改革姿勢が社会に評価されているのでは」とみる。
早稲田大は21世紀に入って、学部の新設、再編を盛んにおこなってきた。04年には国際教養学部を新設。1年間の海外留学を必修とするほか、ほぼすべての講義が英語で行われることが話題を集めた。07年には文学部を改組し、第一、第二文学部を文化構想学部、文学部に再編。また理工学部も基幹理工学部、創造理工学部、先進理工学部の3学部に再編した。
「こういった改革をする大学は、先進的なイメージを与えます。新たな学部ができるということは、新たな卒業生が会社に来るということですから。その学部で何を学んでいるのかをきちんと説明できれば、企業の人事採用担当者から『いい大学だな』と評価されます」(安田常務)
教育ジャーナリストの小林哲夫さんも、早稲田大の学部の興隆に着目する。
「社会科学部(通称・社学)が近年、偏差値を上げています。政経や法といった看板学部よりも低く見られがちな学部でしたが、学際的に多領域を学べるという魅力から、人気になりました。ここ数年でどの学部も看板学部となったことが、外部からも評価されているのだと思います」
リクルート進学総研の小林浩所長は、早稲田の2000年代のグローバル化改革のインパクトが大きかったと話す。
「早稲田大は12年に『WASEDA VISION 150』を打ち出し、32年に日本人学生の留学率100%をめざすなどの具体的な数値目標を掲げました。14年には、国際学生寮『WISH』を新設するなど、グローバル化を積極的に推進しています。
また教育面でも改革が行われています。少人数教育が拡充されており、今や授業の8割が50人以下の教室で行われています。語学では、4人の学生を1人のチューターが担当する『チュートリアルイングリッシュ』が導入され、このプログラムは全学生が受けています。こうした改革のインパクトが、社会人から見た早稲田大の評価を変えているのではないかと思います」
一方の慶應義塾大も、この20年間で次々と学部を新設している。01年、看護短期大の改組により看護医療学部を設置。08年に共立薬科大との合併により薬学部を新設、20年には東京歯科大との合併により歯学部を新設する「大学M&A」の予定が発表され、話題を呼んだ。
これらの学部の入試難易度は高い。看護医療学部、薬学部ともに、同系統の学部のなかでトップクラスの偏差値を誇る。薬学部は共立薬科大薬学部時代よりも偏差値が上がったことから、歯学部も偏差値が押し上げられると考えられている。