医学博士で管理栄養士の本多京子さんは、食材を冷凍保存して上手に利用する達人です。『シニア世代の食材冷凍術』(講談社刊)という著書があるほどです。冷凍は“水の科学”。風味や食感が変化して、冷凍前の状態よりもおいしさで劣ると考えられがちですが、逆に変化を利用することで手間が省けたり、調理が上手にできたりします。冷凍保存に向いている意外な食材と活用法を教わりました。
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まずは、食材の冷凍による変化をおさらいしましょう。本多さんは次のように説明します。
「冷凍は“水の科学“です。食品の中の水分が凍ることで、栄養やうまみを閉じ込めているのです。冷凍は食品の細胞の中にある水分が凍った状態です。細胞中の水分は凍ると体積が増えるので、細胞膜を傷つけるのです」
細胞が傷つくと、解凍時に栄養素やうまみが水分とともに流出します。これがドリップと言われるもの。また水分が流れ出ると、歯ごたえが悪くなったりスカスカなったりして、食感が冷凍する前とは違ってくるのです。
しかし、この変化を逆に活用すれば、調理が楽になったり、味付けも上手に行ったりすることができます。
実は、生卵も冷凍することができます。水分の多い食材なので、凍らせると中身が膨張して殻にひびが入ります。それを水につけて解凍すると、簡単に殻をむくことができます。
ただし、冷凍すると質感が変化するので、生では食べられなくなります。解凍して目玉焼きにしたり、卵液にして卵焼きにしたりするなど、加熱調理は問題なくできます。
「半解凍のまま器に入れ、電子レンジ加熱するだけでも手軽に温泉卵風の一品になって朝食などにも便利です。冷凍卵ならではの調理法があるのも楽しいところ。殻をむいて半解凍にした卵を包丁で半分に切り、それをフライパンで焼くと、1個でも黄身が2つの目玉焼きができあがります」
また、冷凍後はかたくなるので、黄身を味噌漬けやしょうゆ漬けにするときも、冷凍したほうが壊れにくく、扱いも簡単になります。ちなみに黄身漬けにしてあまった白身は、かき玉汁に使ったり、冷凍していない卵と混ぜて卵焼きにしたりするなどして活用するといいでしょう。