その他に魚の幽庵焼き、食事は松茸御飯と赤出汁、香の物だった。松茸は最初の焼き物やすまし汁で食べているし、またまた御飯なので、飽きないかなと心配していたのだが、この御飯が薄味ながらとてもおいしく、お釜で供されるので、私はふだん、御飯のおかわりなどしないのだが、山盛り二杯を食べてしまった。他の三人も同じようにおかわりをした。本来ならばお給仕の女性がよそってくださるのだが、すでにおかわりを済ませている私たちを見て、

「申し訳ありません。わたくしがしなくてはならないのに……」

 と詫びてくれた。

「いえいえ、おいしくてあっという間に食べてしまったので、勝手にやってしまいました。どうぞお気遣いなく」

 私たちはお釜ひとつ分をきれいに食べてしまった。水菓子ときちんと作られたわらび、抹茶もいただき、大満足の昼御飯だった。友だちも娘さんも喜んでくれて、本当に楽しいお昼の時間を過ごした。

 その会食の後もずっと頭から離れなかったのが、出汁についてだった。私は二十年近く前は、出汁をとるために、毎朝鰹節を削っていた。木の箱に鉋が逆にはまったような形のもので、下に引き出しがついている、古典的な道具を使っていた。しかしなかなか上手に削ることができず、最初は粉になってしまい、これだったら鰹節粉を買ったほうがいいのではとも思った。しかしネコもいるので、家で削った鰹節のほうが喜ぶだろうと、やっと削り節らしくなった形状のものをネコの御飯の器のなかに入れてやったら、匂いを嗅いで、

「ふんっ」

 と顔を背けて行ってしまった。

「えっ、なんで?」

 ネコにとってはこれほどのものはないと思ったのに、完全に無視された。それもたまたまだったのかなと、二、三日経って、もう一度同じことをしたら、ネコの態度は同じだった。そして掌にのせて口元に持っていったら、

「ふんっ」

 という鼻息で削り節は散らばってしまったのだった。それで私は意気消沈し、あまりに手間もかかるということで、鰹節を削るのはやめにした。

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