野口:高3のときに、立花隆さんの『宇宙からの帰還』を読みました。引退した宇宙飛行士を追いかけ、宇宙に行くことが人間をどう内面的に変えるのかというのを書いた名作です。月面着陸とかは教科書で見たけど、宇宙に行った人の内面の苦しみや挫折を読んだときに、そういう職業人がいるってことをリアルに感じたんです。そこは一つの出発点かな。
大宮:大学に行って宇宙飛行士に役に立ったことってあります?
野口:語学が好きで、第2外国語のフランス語は自分で語学学校に通いました。他にロシア語と中国語を第3外国語でとって。航空宇宙工学科の選考基準の点数が結構高いから、点数を上げるためだけに取りました。
大宮:珍しい理系学生ですね。外国語得意だなんて。
野口:宇宙飛行士になって最初のうちはアメリカ暮らしで英語だったけど、国際宇宙ステーション時代に入るとロシアが極めて大事なパートナーになって、学生時代に第3外国語でロシア語をやってたのはすごく大きかった。文字が読めるだけでね。
大宮:将来国境のない仕事をやるかもって予感がしていた?
野口:いや、英語が好きで、いろんな所に行く仕事ができたらとは思ってました。宇宙飛行士目指してロシア語とってた学生は同期でもいて。
大宮:その方が(宇宙飛行士に)ならなくて、野口さんがなるなんて。
野口:人生、そんなもんですよ。
大宮:ですね(笑)。
※AERA 2022年7月11日号