Qさんと息子はびっくりしたが、彼女にはそれは常識外れではなく、彼の母親を祝うための「料理」だった。Qさんはどこまでアドバイスをしたらいいかと悩んでいた。息子が婚約者であれば、義母としていえるけれども、息子は結婚する気はないといっているし、今の立場ではあれこれいいにくい。自分のために作ってくれたことも、これはちょっと違うのではといい難い要因になっていた。それを聞いた私も困った。ただ2人の結婚はなさそうだという雰囲気は漂っていたので、それならば三段重の件は、忘れていいんじゃないのとQさんには話した。

 昔は世の中の人の食に対する常識はほぼ一致していたが、今は違っている。彼女の握ったおにぎりでさえ、食べたくない彼氏もいるのだから。私はこれらの話を聞きながら、生活の基本は食なのに、そういった考えだとますます彼らが結婚するのは難しそうだし、結婚したらしたで、びっくりするような食べ物が出てきそう。傍から見ていると面白いといえば面白いが、想像もつかない状況の連続に、私はただただ、へええと驚いたのだった。

※『一冊の本』2019年4月号掲載

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