鉄道車両や、自身が腰かけているベンチも水野のデザインディレクションによるものだ(撮影/岡田晃奈)
鉄道車両や、自身が腰かけているベンチも水野のデザインディレクションによるものだ(撮影/岡田晃奈)
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水野が率いるgood design companyのメンバーたちと。東京・代官山のオフィスには、テラスや屋上もある。高台にあって「気持ち良く抜けている」(水野)ことがとても気に入っていると語る(撮影/岡田晃奈)
水野が率いるgood design companyのメンバーたちと。東京・代官山のオフィスには、テラスや屋上もある。高台にあって「気持ち良く抜けている」(水野)ことがとても気に入っていると語る(撮影/岡田晃奈)
鎌倉にも拠点があり、週末を家族や社員と過ごすことも多い。最愛の息子は小学生。海に東京ディズニーランドに海外旅行にと、家族で頻繁に出かける。本好きは、息子に遺伝したと笑う(撮影/岡田晃奈)
鎌倉にも拠点があり、週末を家族や社員と過ごすことも多い。最愛の息子は小学生。海に東京ディズニーランドに海外旅行にと、家族で頻繁に出かける。本好きは、息子に遺伝したと笑う(撮影/岡田晃奈)
水野を特集する雑誌もあるデザイン界の大御所の一人。だが、そんな素振りはまったく見せない。人を喜ばせ、笑わせる「愛されキャラ」は大きな魅力だ(撮影/岡田晃奈)
水野を特集する雑誌もあるデザイン界の大御所の一人。だが、そんな素振りはまったく見せない。人を喜ばせ、笑わせる「愛されキャラ」は大きな魅力だ(撮影/岡田晃奈)

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 くまモンのデザインを始め、キリンやNTTドコモ、2014年からは相模鉄道の事業全体のクリエイティブを担ってきた。ひっきりなしに仕事が舞い込む売れっ子のクリエイティブディレクター。水野学を特集する雑誌もあるほどだ。水野のデザインはただ美しさだけを追求したものではない。お金も第一には考えない。水野が考えるグッドデザインとは一体何か。

 首都圏では、電車といえばシルバーが思い浮かぶ。だが、目の前を通過していったのは、鮮やかなネイビーブルーの車両。神奈川の横浜と海老名、湘南台を結ぶ相模鉄道(相鉄)で、4月に運転を始めた12000系だ。落ち着いたグレーのシート、楕円形(だえんけい)のつり革、昼夜で色合いの変わる照明など斬新な発想の内装も手伝って、この新しい車両は乗客から高い支持を得ている。車両のデザインと監修を手がけたのが、水野学(みずの・まなぶ)(47)だ。

「秋からは東京都内に乗り入れます。そのときに、どこの電車なのか、すぐにわかるようにしたかったんです。一色の全塗装は実はシルバーに塗装するより環境負荷が少なく、メンテナンスのコストもいいんです。ネイビーブルーは、横浜の海の色をイメージしました。相鉄の最大の魅力は、横浜という地ですから」

 水野は2014年から、相鉄のブランドイメージと認知度向上のためのプロジェクトでクリエイティブディレクターを務めている。「これまでの100年を礎に、これからの100年を創る」をコンセプトとした、相鉄の鉄道事業全体のクリエイティブを担ってきたのだ。駅舎は煉瓦(れんが)やガラスなど横浜を象徴するような素材にこだわり、制服は濃紺の色にリニューアルされた。プロジェクトを依頼した相鉄ホールディングスの経営戦略室課長の鈴木昭彦(45)はこう語る。

「デザインは最終的な形や色などではなく、基本コンセプトこそが大事だと考えていました。水野さんはそのことをとてもよく理解されていまして、似合わない服は着せません、最終的には会社の売り上げを伸ばすことが目的です、と明確におっしゃられたことが強く印象に残っています」

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