■キャッツミャウブックス(東京・世田谷)
住宅街にある「キャッツミャウブックス」では、4匹の猫店員が迎えてくれる。店員は全員が元保護猫。店内では昼寝にいそしむ店員をながめ、膝に乗ってくる店員の接客を受けながら、ビールやコーヒーを楽しむこともできる。売り上げの10%は保護猫団体に寄付される。
本と猫とビールが好きな店主の安村正也さんは2年前、会社員をしながらこの店を開いた。
「いわゆる猫カフェは男一人だと行きづらいけど、ビールも出している猫本屋だったら入りやすいと思って。保護猫のことを知ってもらい、猫と暮らしてもいいかなと思ってくれたらうれしいですね」
店番は妻の真澄さんと交代で。会社帰りに大ジョッキをあけて本も買ってくれる近所の人、毎月何万円もまとめ買いする人、貴重な猫本コレクションを寄贈してくれる人もいる。正也さんの好きな文化史、博物誌などの人文書は、あまり売れなくても常備しているそうだ。
正也さんは、猫嫌いな人に『私はネコが嫌いだ。』をすすめる。
「暮らしの中で猫という存在が大きくなって、どんなふうに人の生活を変えていくかを感じさせてくれます。最後は号泣必至。一回でも猫と暮らしたら、人生が変わりますよ」
自身も猫と出会って家を買い、本屋を始めてしまったから説得力がある。
中級者向けに選んだのは『ilove.cat』。とにかくおしゃれな本で、「うちはロイカナのカリカリ」のように、登場する猫のごはんのこだわりが必ず書いてあるのがおもしろいと言う。
何年も猫と暮らす上級者には、哲学者による『猫たち』がおススメだという。動物行動学などを勉強しても、猫が何を考えているのかはわからない。例えば、猫店員たちは食事の時間が近づくと、決まって机の周りを反時計回りにぐるぐる回りだす。
「この儀式の意味を考えることは哲学です。猫と暮らしている人は、猫の行動をなぜ?と不思議に感じることがきっとあると思う。その思考を深めてくれる一冊です」
(ライター・仲宇佐ゆり)
【レベル3】『猫たち』フロランス・ビュルガ著、西山雄二・松葉類訳 1800円 法政大学出版局 猫と暮らすフランスの哲学者が「共同生活」「儀式的なもの」など六つのテーマに分けて猫について考察。
【レベル2】『ilove.cat』 1500円 リトルモア 角田光代、坂本美雨らクリエーターに猫との生活についてインタビュー。写真や本人の作品を交えて紹介。
【レベル1】『私はネコが嫌いだ。』よこただいすけ 1400円 つちや書店 娘が拾ってきた黒猫に翻弄されるお父さん。嫌い、嫌いと言い続けるのだが……。犬派も手に取りやすい絵本。※価格はいずれも税別