テレビでは時短料理の工夫や、家政婦さんが限られた時間内で、何種類もの料理を作っているのを見ることがある。ガス台の複数口やIHヒーター、電子レンジ、オーブントースター、ミキサー、フードプロセッサー、炊飯器などのキッチン家電をフル稼働させて、家族4人分の栄養バランスのいいおかずを三食三日分、そのうえおやつまで作ったりする。それを見ていると、湯を沸かした鍋のなかに、食材を入れたビニール袋をいくつか浸し、湯煎状態にしておかずを作っていた。私が見たときはその方法で、卵液の中にネギを入れて、卵焼き風のおかずを作っていた。そういう方法もあるのかと感心した。並行して調理ができない人たちは、そのような映像を一切見ていないのだろうか。幼い子供を抱えて料理は大変だろうし、母親たちにとってはいちばんの関心事だと思うけれど、ママ友との会話でも話題は出ないのだろうか。

 そのような家事のプロが話題になるのは、彼女たちのテクニックを参考にしたい人が多いからだろう。少しでもかける時間は短く、品数がある食卓を調えたい。しかし食事は単品でいいと考えていれば、まったく必要のない情報だ。家族もそれでよければなおさらだ。世の中には仕事でも段取りが悪い人はいるから、誰もがてきぱきと物事を並行してできるわけではない。しかし今はほぼどこの家でも電子レンジはあるだろうから、それを使えば単品食を避けることは簡単にできると思うのだけれど。もしもそれすら面倒といわれたら、おばちゃんは、お邪魔しましたと引き下がるしかないのである。

※『一冊の本』2019年2月号掲載

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