でも彼女たちの家族がいいのなら、それでいいんじゃないのと慰めると、Pさんは、
「でも体調が悪いとかだるいとか、いつもいっているの。仕事にも支障があるし、だからつい余計なことをいっちゃうんだけどね」
と小さな声になった。
「ちゃんと一品、作っているのだから、もうひと息、がんばってもらえるといいんだけどね」
私がつぶやくと、
「そうなんだけど、そのもうひと息が難しいみたいなの」
とPさんはため息をついていた。青菜のおひたしや炒め物、生野菜のサラダだったら、すぐに作れるのにと思いながら、市販のお惣菜に頼りがちな彼女たちにとっては、一品作るだけでも大事なのかもしれない。三食一品のみで済ませる食生活を続けるのは、これから子供も成長することを考えると、やはりよくないのかもしれないなあと、私は他人様の家のことながら気になった。
そして年が明けてPさんに会ったら、
「わかったのよ、一品の謎」
といわれた。私たちおばちゃんは、どうして晩御飯に一品しか作らないのだろうと、首を傾げていたのだが、新年会でその理由が判明したと、彼女は目を輝かせていた。
「えっ、どうして、どうしてなの」
身を乗り出して話を聞いたら、母親たちは、
「一品作ると疲れて、もう一品なんて作る気にならない」
といったらしい。しかしたらこパスタは、パスタをゆでている間に、あえるソースを作っておいて合体させるだけである。シンプルな料理で、30分も1時間もかかるような料理ではない。お好み焼きだって、順番に具材をのせて焼けばいいだけなので、こちらも時間はそれほどかからない。
Pさんがよくよく話を聞くと、これまで彼女たちは自分なりに料理を作ろうとがんばっていた。しかし続けているうちに、疲れて頓挫してしまった。その疲れる理由が、
「一品作り終わって、また一品作っているととても時間がかかる」
といったという。
「ええっ」
私は単純に彼女たちの「面倒くさい」という気持ちから出てくるものだと考えていたのだが、実はそうではなかった。そもそも並行して調理をするという考え方が最初からないのだった。