「えーっ、作ったのはえらいけど、それだけじゃ栄養が……」
そういいかけたPさんに対して、
「でもたらこは魚だし、バターや生クリームも入れたし、パスタは炭水化物で栄養があるんでしょう」
「お好み焼きだって、小麦粉に卵に豚肉も入っていますよ」
と反論した。Pさんはため息をつきながら、
「炭水化物や魚、お肉には栄養があるけど、ビタミン類はどうなっているのかな」
「ビタミン? えーと、それは……」
2人は口ごもった。
彼女が食事のバランスから考えると野菜が必要だから、サラダか何かをもう一品、加えたほうがいいんじゃないかとアドバイスすると、
「でもお好み焼きには、キャベツがたっぷり入っています」
とBさんが不満そうにいった。
「それはわかるけど、キャベツだけでしょう。できれば火を通したもののほうが、量をいっぱい食べられるからいいけれど、おひたしとか、切って盛るだけの野菜サラダがあれば、もっとよかったかもしれないわね」
「はあ、そうですか」
2人は納得し難い表情になっていたという。
Pさんは私に、
「みんなは栄養バランスって考えないのかしらねえ」
と聞いてきた。
「うーん。考えてないかも。昔は親も学校も、子供の偏食を許さなかったけれど、今はそれが虐待ではないかとまでいわれるようになって、いやなものは無理して食べる必要はないっていう方向になっているでしょう。アレルギー体質も多いし。子供が野菜がきらいだったら、親がよほど考えて食事を作らないと食べる機会がなくなるし、その子が親になったときも同じようにするだろうから、偏食が引き継がれていくんでしょうね」
人間だれでも好きなもの、きらいなものがあり、何でも食べられる人のほうが少ないのかもしれない。
「でも明らかに野菜が少ないのよ」
たしかにたらこパスタ、お好み焼きだけのひと皿だとちょっと偏りすぎている。もしかして料理を作らない人たちが、野菜を摂っていると自慢するアイテム、野菜ジュースを飲んだのかなと、Pさんが聞いてみたら、食事のときに飲んでいたのが両方ともコーラだったこともあり、常々、ちゃんとした食事を摂ってもらいたいと思っている彼女は、余計にへこんでいた。