AERA2022年7月4日号より
AERA2022年7月4日号より

「現行法の枠組みの中だと児相は役割に従って動きます。子どもの保護をする立場からすると可能な限り実親に戻す体制を考えるのが児相です。調査の結果、母親にたどり着いたとき、普通なら親にアクセスするだろうが、今回は内密出産です。病院との協議に最終的には市長が関与すると思う。追求をどこかで止めるのではないかと」

 女性の知られたくない権利は、なぜこれほど軽いのだろう。床谷氏は、背景に戸籍法があると指摘する。

「母親は産んだ子どもについて出生届を出す届け出義務が定められているが、その義務に反する『知られたくない権利』については強調したくないのが国の立場でしょう」

 戸籍法を軸に見ると、問題の輪郭がはっきりしてくる。

「1例目のケースで、国がすぐに単独戸籍による就籍をしたのは、戸籍による管理体制を維持する国の方針に沿っています。国が無戸籍児解消キャンペーンに熱心なのも、戸籍制度を維持したいためです。内密出産は子どもを母親の籍に入れないので戸籍制度に障(さわ)るわけです。だから法整備にも国は消極的です」(床谷氏)

(ノンフィクションライター・三宅玲子)

AERA 2022年7月4日号より抜粋

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