「警察を呼ぶ」「データを消せ」。カメラを手にして歩いているだけで不審者扱いもされかねない時代。路上スナップ撮影を怖いと思っている人は少なくありません。もしも実際にトラブルに直面したら? 回避策は?『アサヒカメラ11月号』では、「スナップは怖くない」と銘打ち、プロが教える“いまさら聞けない”スナップ撮影の基本から、路上撮影トラブルの実践的対応術までを72ページに渡り大特集。
前回の記事「写真家・元田敬三 被写体との距離は『相手のパンチが飛んでくるくらい』」に続き、今回も、名スナップシューターとして知られるプロが各々の設定や極意を披露。木村伊兵衛賞作家の百々新さんが明かしたスナップへの思いとは? この特集を読めば、カメラを持って街に出たくなること請け合いです。
* * *
モンゴルの写真はウランバートルの街中で歩きながら撮りました。気温はマイナス10度ぐらい。向かってくる人とともにパースを含め奥行き全体をとらえています。主題を追いかけながらも背景もどう包み込むかという撮り方です。
1990年代半ばからアジア各地を撮ってきました。それぞれの街に対し現在の自分がどう向かうかが写真になります。街と人と自分の身の置き方。その理想の距離感は上海を撮影していたときに培われていますね。そこから、それぞれの場所、被写体に対して方法論が生まれてきた。
僕自体が異物です。しかし他者の領域に土足で踏み込むことも、かといって望遠で覗きこむようなこともしたくない。堂々と透明になりながら、ギリギリのところでシャッターを押すんです。大きなカメラを持ち、あいつは写真を撮るものなんだと見られる記号性を持ちながら。それは海外でも日本でも一緒です。
シルクロードを旅したいとずっと思っていました。でも先駆者のあらゆるアプローチがあるので、世界のなかで自分の何が異質であるかを知ることが手立てではないかと考えたんです。撮ることを網羅することで、差異があぶりだされる。写真だから見えてくることをやってみたいですね。