またクイズ番組を観ていると、偏差値の高い学校に在籍していたり、卒業していたりする学生やタレントたちが、私が聞いたこともなく存在すら知らなかった世界遺産を知っているのに、丸ごと1匹の魚の画像を見て、名前が答えられなかったりする。偏差値の高い女性たちに、どの野菜が水に浮くか質問をしていたが、あたふたしてわからない人が多く、どの人が自分で料理を作っていないかがよくわかった。

 私にとっては何をいわれているか質問の意味さえわからない、宇宙に関する小数点がいっぱいついたり、見たこともない記号がたくさん出てきたりする複雑な計算問題とか、地球のはずれの島の話とかではない。こういう質問の場合、学歴、偏差値は関係なく、おじちゃん、おばちゃん層や、若い人でも食べるのが大変で、スーパーマーケットなどの生鮮食料品売り場でアルバイトをしていた人たちのほうが得意である。偏差値は彼らには及ばないが、実生活に基づいた質問に強い。生活偏差値が高いのである。勉強だけではなく、こういった人たちも褒めてもらいたいものだ。

 他にも鮮魚の対面売り場で鮭の切り身を買ってとりあえず食材の購入は済み、あとは昼食である。弁当類の売り場に行くと、台の8割くらいに弁当が並べられていた。いったいどんなものがあるのかと端から眺めていくと、昔ながらの和食の幕の内タイプよりも、中華弁当の割合が多かったのは、それを求める人が多いからに違いない。弁当を買っている客層を見ると私よりも年長の高齢の女性が多く、それに合わせたのか食べやすい小ぶりな手まり鮨の折詰も積まれていた。

 そのメインの台の脇に、そのデパートと提携している某高級スーパーマーケット製の弁当が数種類並べられていた。私はその中で箱がいちばん大きいトンカツ弁当に目を奪われてしまった。ごく普通の大きさのトンカツが卵でとじられている。

(トンカツ、おいしそう)

 いつトンカツを食べたっけと考えてみたら13年前だった。そのときは資料を読んで書かなければならない原稿を抱えていた。本を読むのは好きなので、複数の本を読みながら、あれこれ調べていく過程はとても楽しいのだが、それで終わりではなく、肝心な原稿を書くのが辛かった。本を読んだところだけだったらいいのになあと、毎月、締切が近づくたびにいつもため息をついていた。原稿を書きはじめてもなかなかエンジンがかからず、エネルギー補給のつもりで、連載が終わる最終回の原稿を書いているときには、週に3回はトンカツを食べていた。どういうわけか私の体がトンカツを欲していたのである。そして食後には必ずハーゲンダッツのアイスクリームを1個。原稿を書き終えたら、ひと月で3キロ太っていた。その積み重ねが、それから3年後、漢方薬局にお世話になる、ひとつの原因にもなったのだろう。

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