年明け1月中旬には千葉や埼玉で中学入試が始まる。想定外のことが起きても、親も子も安定した気持ちを維持して入試に臨むことが重要だ(撮影/写真映像部・馬場岳人)
年明け1月中旬には千葉や埼玉で中学入試が始まる。想定外のことが起きても、親も子も安定した気持ちを維持して入試に臨むことが重要だ(撮影/写真映像部・馬場岳人)
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 中学入試本番まであと少し。「必笑」で終えるために必要なことや親の心構えについて、教育ジャーナリストのおおたとしまささんに聞いた。2022年12月19日号の記事を紹介する。

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──学習の進捗管理など、親がつい手伝いたくなりますが、自主性を阻むのではとも思います。

 親がお膳立てすることで、目先の点数は上がると思います。しかし子ども自身が試行錯誤をして回り道をしながら、あるいは非効率なやり方をしながらでも、「これは自分の受験なんだ」と決めて、自分の目標に向かって努力をすることが大切です。

 自分の学びの型を見つけていくことの楽しさを知るという経験は、一生の財産になります。最初から「それは間違っているから、正しい効率的なやり方はこうだよ」と決めつけてしまうと、その受験勉強にその子の存在はなくなってしまうんです。効率良く成績を伸ばし、希望の学校に入学できたとしても、いわゆる燃え尽き症候群になってしまい、無気力に学校生活を送るようになってしまう。そんな話を実際に学校の先生からもよく聞きます。「せっかく成績優秀で入学してきたのにやる気のかけらもない」と。こうなっては残念です。

教育ジャーナリスト おおたとしまささん(49)/リクルートを経て育児誌・教育誌の編集にかかわり、小学校教員経験も。最新刊『勇者たちの中学受験~わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき』(大和書房)など著書多数(撮影/写真映像部・馬場岳人)
教育ジャーナリスト おおたとしまささん(49)/リクルートを経て育児誌・教育誌の編集にかかわり、小学校教員経験も。最新刊『勇者たちの中学受験~わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき』(大和書房)など著書多数(撮影/写真映像部・馬場岳人)

■子どもの頑張る横顔を見て

──最終的な出願校を決める時期、迷いも生まれますが、気をつけることはありますか。

 受験システムに過剰適応しなければ手が届かない学校よりも、自ら切り開いた自分自身のやり方で合格できる学校を目指すことのほうが、よっぽど意味があると思います。親が手を貸すということは、「あなたにはできない」ということを間接的に示していることになります。そうではなくて、自分の力で成し遂げるという姿勢を親も喜んで応援してくれることが、子どもの励みとなります。そうすることで、中学受験を中学入学後とその後の人生を支える成功経験にしてほしいと思います。

「合格して努力が報われてほしい」という思いは当然あるでしょう。でも、子どもが頑張っている姿を目の当たりにすると「この子がこれだけ頑張れるようになったのだから、結果はどうでもいいじゃないか」というアンビバレントな気持ちを持つようになります。「もう結果は怖くなくなりました」という声も聞きます。そのような気持ちになれた人たちは、結果がどうであっても笑顔で中学受験を終えています。

 第1志望に合格できる受験生は3割と言われます。その現実を受け止める心構えをしておくべきです。理屈ではなく、子どもが頑張る横顔をじっくり見てください。そうすると「こんなにこの子が頑張ってるのに、結果だけにこだわって私は何をしているんだろう」と思えるはずです。子どもは緊張や不安を簡単に表情に出さなくても、実際はいろいろなことを感じています。それを察してあげてほしいのです。親が満面の笑みで「よくがんばったね!」と言ってくれたら、子どもにとってそれは本当に嬉しく、良い経験になります。

(構成/フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2022年12月19日号より抜粋