また、山歩きが好きな方は麓からの登頂がオススメ。最寄り駅のJR伯備(はくび)線の備中高梁(たかはし)駅から天守までは、徒歩1時間半ほどの行程で、登山口からはハイキングコースが整備されている。山登りが嫌いでも8合目のふいご峠までは、乗り合いタクシーか登城整理バス(混雑期を中心に運行)、自家用車で登れるので、心配は無用。ただし、ふいご峠から天守まで、徒歩約20分は覚悟しよう。
備中松山城以外にハイキング気分が味わえる城として、愛媛の松山城も忘れてはならない。
「明治まであと10年余に迫った幕末の1854年(安政元年)に築かれた、現存十二天守の中では一番新しい天守を持つ城です」
平野部の山や丘陵に築かれた平山城だが、標高132メートルと平山城のなかでは山城に近い。
登城ルートも4ルートと多く、見どころも豊富だ。黒門口登城道が江戸時代の正規ルートではあるが、オススメは二之丸史跡庭園からの県庁裏登城道。このルートでは現存数の少ない「登り石垣」が見学できるからだ。登り石垣は、山腹からの敵の侵入を阻止する目的で築かれた石垣で、麓から山頂まで伸びている。
松山城は、どのコースを登っても、徒歩20~30分で天守まで辿り着けるのが嬉しい。また8合目までは、ロープウェーとリフトがあるので、足腰に不安のある人も安心だ。
天守の築かれた年代といえば、今年の3月に興味深いニュースが流れた。これまでは、1576年(天正4年)の建築説(異説あり)があった、福井の丸岡城天守が日本最古の天守ではないかとされていた。
ところが、今年3月末、「坂井市教育委員会が行った放射性炭素年代調査などの学術調査で、天守は寛永年間(1624~44年)に、丸岡藩初代藩主の本多成重が整備したものと結論付けられた」との報道により、現在は、関ヶ原の戦い以前の、1594年(文禄3年)に築かれた、長野の松本城天守が“日本最古の天守”に躍り出た。
「国宝に指定されている松本城は、豊臣秀吉の命で石川数正が築いた城です。建築当初は、大天守と乾(いぬい)小天守を渡櫓で繋いだシンプルな構造でした。現在も内堀の埋橋(うずみばし)方面から見ると、当時の姿を垣間見ることができます」