防犯カメラが重点配置されている新宿・歌舞伎町(撮影・初瀬礼)</p>

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防犯カメラが重点配置されている新宿・歌舞伎町(撮影・初瀬礼)

 繁華街で警視庁が設置した監視カメラは悪質な客引き行為を見張るだけでなく、日々、犯罪の芽を監視する装置として、もはや欠かせないものとなっている。プライバシーの侵害などマイナス面もある防犯カメラだが、テロの脅威を背景に、海外ではSFかと思わんばかりの顔認証システムが進化し続け、犯罪捜査に役立てられている。注目の警察小説「警察庁特命捜査官 水野乃亜 ホークアイ」で、手配犯追跡のためにAIによる顔認証システムが本格導入される近未来を描いた初瀬礼が、その現状を報告する。

【写真】歌舞伎町に設置された警視庁の防犯カメラ

  秋篠宮ご夫妻の長男・悠仁さまが通うお茶の水女子大学付属中学校で、悠仁さまの机の上に刃物が置かれていた事件が、平成が終わろうとする4月26日に発生した。警視庁は元号が変わる直前の4月29日、建造物侵入の疑いで56歳の男を逮捕した。この事件は元号が変わっても、暫く話題になっていたが、筆者が注目したのは容疑者逮捕に至る背景を報じた週刊朝日の記事だった。

 警視庁は刑事部にある捜査支援分析センター(SSBC)を投入、防犯カメラの画像を繋ぐリレー方式を駆使し、短期総力戦で臨んだという。現場近くある防犯カメラやスマホに映った犯人の痕跡をSSBCの要員が手分けして探し、映像解析したものだ。ちなみにこのSSBCの略は捜査(S)、支援(S)、分析(B)がローマ字読み、なぜか最後のCのみCenterに英単語の頭文字だそうだ。

 2002年に歌舞伎町で運用が始まった警視庁の街頭防犯カメラシステム。その設置台数はその後、渋谷、池袋、上野、六本木、そして錦糸町に広がり、195台に及んでいる。カメラの設置は犯罪を抑止するだけでなく、強引な客引きも減る効果があったとされるが、カメラが撮影しているのは大半が一般市民の日常生活だ。かつて警視庁の捜査官達と歌舞伎町近辺の店で待ち合わせる時には必ず、店の出入りは別々にし、一緒にいる姿をカメラの前にさらさないようにしていた。

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