ジャカルタのマンガライ駅。約1000万人の足を日本の中古電車が支える(撮影/阿部稔哉)
ジャカルタのマンガライ駅。約1000万人の足を日本の中古電車が支える(撮影/阿部稔哉)

■飛行機の事故で出発が大幅遅れ

 翌日、ブキティンギからパダンに出て、空港に向かった。ライオン・エアのチェックインカウンターは混乱していた。そこで、その日の朝、ライオン・エアの航空機がジャワ島沖で墜落したことを知った。

「やはりバスにすべきだったか……」

 大幅に遅れたジャカルタ行きに乗りながら、つぶやいていた。

 一度、LCCの“軍門”にくだると、後は坂道を転げ落ちるようなものだった。ジャカルタからバンコクまでもLCCに乗ってしまった。

パダンのミナンカバウ国際空港からLCCでジャカルタに向かう(撮影/阿部稔哉)
パダンのミナンカバウ国際空港からLCCでジャカルタに向かう(撮影/阿部稔哉)

 30年前、ジャカルタからシンガポールまで飛行機を使った。その運賃が約1万7487円。シンガポールからバンコクまでは3日間バスに乗り続けた。ところが今回、ジャカルタからバンコクまでは約9325円。LCCの時代なのだと痛感してしまった。

 今回かかった費用は7万7491円。30年前は11万9978円。4万3千円近く安くあがった。

 しかしどこか引っかかるものがある。便利で安くなったいまと、30年前の葛藤。それを引きずりながら、次回はヒマラヤトレッキングに挑むことになる。

※週刊朝日2019年3月15日号掲載

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■下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年生まれ。新聞記者を経てフリーに。『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)が旅行作家としてのデビュー作。アジアや沖縄などに関する多数の著書がある。AERA dot.では「どこへと訊かれて」を連載中。朝日新聞デジタルの「&TRAVEL(アンド・トラベル)」でも記事が配信されている。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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