「試合前なのに、なんで勝手に休んでるんだ! 自分のことしか考えてないんだな!」
廊下に響き渡るような大声だった。校長のほうを見ることさえできず震える娘を見て、女性は声を上げることを決意する。
「この人に子どもたちの未来を預けてはいけないと思いました」
同様に体調が悪化するなどして学校を休んだり、「退部したい」と言ってくる仲間もいた。学年主任に校長の暴力を伝えても「ふーん」と関心なさそうに相づちを打つばかり。その揚げ句「部(活動)は勝つためにやってるからねえ」と言われた。その会話をすべて録音し「校長が顧問なので学校だけでは自浄作用は働かない」と11月に市の教育委員会に訴え出た。
「学校に行けず心身に不調が出て勉強どころではなくなり、娘は人生を狂わされた。何とか親として娘を守りたい」(女性)
アユさんは気丈に話した。
「お母さんたちが『あなたは悪くない』と言ってくれて嬉しかった。校長先生には退職してほしい。それでみんなが気づいてくれて、部活の暴言や暴力が無くなるといいと思う」
(スポーツライター・島沢優子)
※AERA 2022年12月26日号より抜粋