学校のスポーツ指導の現場では今も、暴力や暴言がはびこっている。これまでは訴えを諦める人がほとんどだったが、最近では声を上げるケースも出てきた。2022年12月26日号の記事を紹介する。
【グラフ】2012年以降体罰を受けた児童生徒数の推移はこちら
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やめて!
そう叫びそうになった口を、女性は手で押さえた。
中学2年生になる娘アユさん(仮名)が所属するバレーボール部の男性顧問が、部員の腹にボールを投げつけた。1メートル半ほどの至近距離から何度も打ち付ける。
「何回同じことするんか!」
「おまえら、頭が悪いんだよ!」
顧問がブチ切れるときは、部員がミスをしたときだ。あまりの痛さにうつぶせに倒れた選手のからだの上にボールを投げつけることもあった。暴力や暴言は常態化していたが、周囲から注意を受けることはなかった。なぜなら顧問は校長なのだから。
女性はこの10月、初めて暴力を目にした。そこで娘も暴力を受けていたことを知った。
「ショックでした。校長は関係機関の役員なので誰も何も言えないようでした。娘がレギュラーから外されるかもしれないと考えると、声を上げる勇気が出なかった」
西日本にあるその市立中学校女子バレー部は、市の大会で何度も優勝する強豪だ。再任用の校長が教員時代から育て上げた。中学でバレーを始めたアユさんが最初にボールを投げつけられたのは1年生の秋。以来、暴力と暴言に苦しんできた。
「先生は(自分たちを)痛めつけないと、自分の思い通りにならないって(考えている)。自分では頑張っているのに、ミスすると『全然頑張ってない』と言われるのが一番つらかった」。調教馬にムチ打つような指導を受け、心身ともに限界を迎えていた。
11月。結果が思わしくなかった新人大会後から校長の暴力指導がヒートアップ。アユさんは学校にも行けなくなった。夜眠れなくなり、微熱や吐き気、腹痛、首の痛みに襲われた。
それでも何とか登校した日。迎えに来た母親の前で校長から怒鳴られた。