日本に数多あるラーメン店の中でも、屈指の名店というものがある。長く日本人の舌を喜ばせてきた老舗、一大ブームを作った名店の店主といえど影響を受けた店はあるはず――。名店店主が選ぶラーメン店を取材する本連載も3回目になった。今回はミシュラン掲載店が選ぶ一杯を紹介する。
【写真】これまた絶品! Due Italian代表メニュー「らぁ麺生ハムフロマージュ」
11月27日、ミシュランガイド東京2019の掲載店が発表された。5000円以下で食事ができるコストパフォーマンスの高い店に与えられる評価として「ビブグルマン」があるが、ラーメン店で今年ビブグルマンを獲得したのはわずか21店舗。昨年より3店舗減り、改めて評価の厳しさを知ることとなった。
そのビブグルマンを5年連続で獲得しているお店がある。目黒の「麺や 維新」である。店主の長崎康太さんが2004年に開業したお店で、鶏ガラに昆布や秋刀魚節などを加えたスープに生醤油を合わせた「醤油らぁ麺」は淡麗系の最先端をいく旨さだ。そんな長崎さんがプライベートで愛するのは、ラーメンにどこまでも真面目だからこそ選ぶオンリーワンな一杯だった。
■ラーメンで身を立てるつもりはなかった25歳青年が独立を決意
長崎さんがラーメンの世界に入ったのは25歳のこと。近所で美味しいと評判の本厚木「ZUND-BAR」で働き始めた。この「ZUND-BAR」、実は“近所で美味しいと評判”という表現では失礼なぐらいの有名店。七沢温泉郷という美しい自然に囲まれた場所にあるスタイリッシュなお店で、全国からファンが訪れる。スープには阿夫利山の豊富な天然水を使い、神奈川の淡麗系ラーメンの走りともいえるお店である。恵比寿や原宿にある人気店「AFURI」もこのお店から生まれた。
独立志願はなかったが名店で働き続けることで楽しさを覚え、2004年に神奈川県大和市で「麺や 維新」を開業する。当時煮干やカツオの効いたラーメンを提供していた「ZUND-BAR」とは違い、鶏を主体としたラーメンでデビューした。
しかし、客足がなかなか伸びず、2006年に閉店。2年後に横浜で再出発した。開店から1年ほどするとリピーター客も増え、軌道に乗り始める。そして更なるステップアップをという思いで2013年には目黒に移転を決意。東京進出を前に、横浜の店をセカンドブランド「横浜中華そば 維新商店」に業態変更した。「麺や 維新」で厳選素材を使ったこだわりの一杯を作るのとは別に、「維新商店」ではラーメンの原点ともいえる懐かしいシンプルな一杯を提供している。
移転後、大躍進した「麺や 維新」は5年連続でミシュランガイド東京に掲載という偉業を成し遂げる。東京で勝負したいという長崎さんの思いが見事結実した。もちろんミシュランの評価が全てではないが、努力がしっかりと形になって表れている。
そんな「麺や 維新」長崎さんが選ぶラーメンは、イタリアンシェフの作るオンリーワンな一杯だった。