■“値段の壁”の中で戦いたかったイタリアンシェフの決意
「黄金の塩らぁ麺 Due Italian」はイタリアン出身の店主・石塚和生さんが2009年に開店したお店だ。
代表メニュー「らぁ麺フロマージュ」(980円)は上に乗ったチーズが目を引くが、実はイタリアンの製法を活かした清湯スープと油の使い方がポイントだ。ラーメンイベントでも大人気。「かっぱ寿司」のラーメンもプロデュースしているので、ご存知の方も多いかもしれない。
この9年で「Due Italian」は市ヶ谷、横浜、日比谷、三軒茶屋、吉祥寺、銀座、台湾と店舗数も拡大してきた。順調に見える石塚さんのラーメン人生だが、波乱万丈に満ちていた。
私生児で生まれ、5歳の時に母親が他界した。自費で高校に通うため、アルバイトで生計を立てる。今から40年前、高校生のアルバイトといえば新聞配達と飲食店ぐらいなもの。とにかく自分で稼がなくてはいけないと吉祥寺の商業施設「ロンロン」(現・アトレ)の洋食店で働き始めた。時給は350円、スパゲティといえばミートソースかナポリタンの時代。自分の作った料理を美味しそうに食べてくれるお客さんの顔が嬉しく、作る楽しさを知ったのと同時に自分で生きていけると自信がついた。高校を中退し、渋谷パルコの「レストラン西武」で働いていた時には渋谷公会堂でのコンサートを控えたアイドルも訪れた。たくさんのお客さんに料理を作るたびに料理人という職業への想いは強くなる一方だった。その後、店長兼料理長として招かれた西新宿NSビルのカフェで成功し、26歳で独立を決意した。
練馬にオープンしたイタリア料理「La Pasta」は石神井、江古田と広がり、別ブランドも含め6店舗を展開。弱冠27歳にして、年商4億円を超えるオーナーシェフとなった。順風満帆に思えたが、石塚さんはあくまで料理人。食材選びに夢中になりすぎたことでお店が傾いてしまう。
そんなある日、テレビ局から一本の電話がかかってくる。体当たりで職人やプロを養成する「ガチンコ!」(TBS系)のスタッフから番組内で好評を博していた「ラーメン道」シリーズに出演できるシェフを探しているという相談だった。「支那そばや」の故・佐野実さんが厳しい指導のもとラーメン店主を育成する企画に「面白そう」だと感じ、自ら出演を決意。41歳の時だった。