AERA2023年1月16日号より
AERA2023年1月16日号より

■応募しても無駄だろう

 その雰囲気に違和感を持ってきた一人が、大学院理学系研究科で物理学を専攻する村尾美緒教授だ。お茶の水女子大学・大学院や海外大学を経て01年に東大物理学科の助教授に着任した。

 ポストが公募されていたので応募した。だが、着任後に研究者仲間の女性からこう言われた。

「東大に女性が応募しても良かったんですね」

 実は、村尾教授は物理学科で初の女性の教員だった。

「私は東大をよく知らなかったので応募しましたが、内部を知る人は『女性は応募しても無駄だろう』と応募しなかったのかもしれません」

 東大には、独特の「仲間うちの文化」があると感じるという。

「学部の授業をして思うのが、名門男子校から東大に進学する学生が、エリートとして一目置かれ、仲間うちで独特の文化を形成する。大学院・教員と進むと必ずしも名門男子校の出身者のみとは限らなくなりますが、閉じた仲間うちの文化は継承されていて、女性や外から来た人には戸惑うことも多いのではないでしょうか」

 村尾教授が東大に来て20年が経つ。だが、物理学教室の講師以上の約40人のうち、女性は村尾教授と准教授の計2人だけだ。

「女性の教員が0人から1人になるのはとても大きいこと。ただ、1人から2人になっても女性の学生が2倍に比例して増えるわけではありません。女性の教員がもっと増えたとき、女性の学生が口コミを聞いたかのように加速度的に研究室に集まってくると思います」(村尾教授)

(編集部・井上有紀子)

AERA 2023年1月16日号

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