共同研究者らと打ち合わせする村尾美緒教授(左から2人目 photo/写真映像部・東川哲也)
共同研究者らと打ち合わせする村尾美緒教授(左から2人目 photo/写真映像部・東川哲也)
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 東京大学が女性の教授・准教授を6年間で現在の1.5倍にし、男性偏重を改善する。なぜ女性の教員が少なかったのか。どんな弊害があったのか。AERA 2023年1月16日号の記事を紹介する。

【グラフ】東京大学の男女別教員数はこちら

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 東京大学の2022年度入試の全合格者のうち、女性が占める割合は20.8%にすぎなかった。過去最高も21年度の21.1%にとどまる。

 実は、女性教員はもっと少ない。教授は1割以下なのだ。

 東大文科・類2年の田中妃音(ひめね)さんは入学前、理系に女性が少ないことは知っていた。だが、授業を受けて気がついた。

「語学やジェンダー関係の授業は女性の先生が多いのですが、それ以外の授業は文系でも男性の先生が多いんです」

 田中さんは3年次から国際関係論コースに進む予定だ。

「私も大学に残って教員を目指したいのに、身近な先生や大学院生はみんな男性なので『仕事と子育てをどう両立しているの』みたいな話が聞きづらいです。聞けば話してくれるかもしれませんが」

 その田中さんが期待する大型プロジェクトが、東大で進められている。27年度までの6年間で、新たに着任する見込みの教授・准教授1200人のうち、女性を約300人にするというものだ。22年5月現在、女性教授の割合は9%、准教授は16%。男性偏重を改善するためで、28年当初に女性の教授・准教授は現在の1.5倍の約400人になる見通しだ。

■ロールモデルになる

 この計画について、林香里副学長(国際・ダイバーシティー担当)は「中高生や大学生、大学院生にとってのロールモデルになる」とコメントした。

教育・研究環境整備の面でも、マイノリティーの数が増えることで声を上げやすくなり、ますます多様な研究者や学生を引きつけるという好循環を生み出したい」

「妻の内助の功に支えられて、すべてを研究に捧げるといった画一的な在り方だけではなく、多様な教員の姿があることは女性の学生だけではなく、男性や他のマイノリティーの学生のエンパワーメント(能力を伸ばすこと)にもつながる」

 東大特有の「雰囲気」にも言及する。

「男性にとっても、男子校のような雰囲気が当たり前の世界で育ち、そこでの『常識』を持ったまま社会に出てしまうと、とりわけ海外に出たときなどに通用しないということに気づくと思う」

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