AERA Money 2022秋冬号(AERA増刊)
AERA Money 2022秋冬号(AERA増刊)

 そこで『eMAXIS Slim』の全商品をiDeCoで買えるようにしたら『iDeCoなら松井が最強』という口コミが広がりました」

 2022年3月、松井のiDeCoの新規加入者数は金融機関全体で20位台から8位へ躍進した。

 和里田社長の目標は「投資の楽しさを広めること」だ。

「つみたてNISAやiDeCoで投資信託のつみたてをはじめると、普段はやることがないので暇になる人もいるようです。そこで投資を趣味のようなものとして捉え、投資対象を広げてみてはどうか、と。関心を持つ対象が増えて視野も広がり、学びのきっかけにもなります。

 老後資金のため、義務感から投資をはじめると長くは続きません。

 投資は知的エンターテインメントだと思うんです。同じエンタメでも、ゲームに課金するのは消費ですが、投資は投下した資金が増えることもある。投資にも目を向けてはどうでしょう」

 取材中ずっと、和里田社長の黒い指輪が気になっていた。

「ああこれ、EVERING(エブリング)です。VISAカードのタッチ端末のある店で使えるツール。財布からクレジットカードを出すどころかスマホに決済アプリを表示する手間もいりません」

 財布も持ってはいる。「コーチ」の長財布はアウトレットで半額だったそう。現金2万2000円と免許証、18枚のポイントカードなどが入っていた。できるだけ持ち歩きたいタイプだという。

 和里田社長の苗字は「わりた」と読む。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で勇猛果敢な武者として描かれる和田義盛の末裔(まつえい)だそう。

「北条氏に敗れて信州に逃れた和田一族が身を隠すため、和田の間に里の字を入れたと聞いています。父も兄も名前に『義』の字が入り、娘が生まれたときに祖母から義子(よしこ)と名づけるよう言われました。断りましたが(笑)」

 年末には政府が「資産所得倍増プラン」の詳細を公表し、証券投資の裾野が急速に広がる可能性がある。和里田氏は松井証券社長という一国一城の主(あるじ)として、証券業界の地図を塗り替えていく。

(構成/編集部・中島晶子、伊藤忍)

※『AERA Money 2022秋冬号』から抜粋

##写真5→h1.jpg(アエラマネーの表紙画像)

<ISBNコード>

B0BKKM48T3@AERA Money 2022秋冬号(AERA増刊)@朝日新聞出版@1100

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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