日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、その店主が愛する一杯を紹介する本連載。極上の自家製麺が光る埼玉・北浦和の名店の店主が愛するのは、和食出身の弁当屋から転身した店主が長年の失敗の後にたどり着いた一杯だった。
【写真】「失敗の多すぎる」店主がつくった美味しすぎるラーメン
■天ぷら屋の黒舞茸に一目ぼれ「他店と似ているものは作りたくない」
JR京浜東北線・北浦和駅の西口から徒歩3分。「柳麺 呉田-goden-」は浦和を代表する大人気店だ。極上の自家製麺のファンが多く、「ざるチャーシュー」や「黒舞茸と近江黒鶏の昆布水つけ麺」などここでしか食べられない独創的な一杯を提供している。
神戸市出身の店主・中野憲さんは地元の老舗「もっこす」からラーメンのキャリアをスタート。その後上京し、護国寺に当時あった名店「ちゃぶ屋」の森住康二さんに師事。4年修業をした後、横浜家系ラーメンの名店「六角家」でさらに修業を重ね、2015年に独立した。バラエティーに富んだキャリアで、それがそのまま中野さんの作るラーメンの独創性につながっている。
「呉田」のラーメンは常に変化し続けていて、全てのメニューが創業当時と違う。同じものを愚直に追い求めていくよりは、常に新しくしていくのが「呉田」流だ。
「新しい食材が入ってきたらすぐに試したいタイプなので、いいものはどんどん取り入れていきます。変わり続けるのがうちのスタイルですね。変わり続ける中で、いつか自然と普遍的な一杯に行き着けばそれがベストかなと考えています」(中野さん)
とにかく好奇心旺盛な中野さんは、ラーメン店だけでなく他の飲食店で出会った食材でも自分のラーメンに落とし込めないかを常に考えている。「黒舞茸と近江黒鶏の昆布水つけ麺」はある天ぷら屋で出会った黒舞茸に一目ぼれして作ったメニューだ。
「他の店と似ているものは作りたくないという考えが前提にあるんだと思います。常に何かを超えたいという気持ちでラーメンに向き合っているので。自分が思いついたアイデアでも、既に他の誰かがやっているということは本当によくあるんですが、諦めずに探し続けることで独創的なラーメンにたどり着けることがあるんですよね」(中野さん)
ラーメンは作る人によって十人十色。食べる側にも好き嫌いはある。その中で、中野さんは一人でも多くの人が好きと言ってくれる新しいラーメンを作ろうと日々試作を続ける。
そんな中野さんが紹介するのは、埼玉の和食出身の弁当屋の店主が始めた失敗の多すぎるラーメン店だ。