●部長に昇進させるなら「判断力」が必須

 また、特に部長クラスに引き上げようという人物に対しては上記の他に「判断力」も求められます。

 ポジションが高くなるにつれて細かな実務からは離れ、重要な判断を求められることが多くなります。そこで判断力が備わっているかが見極めのポイントとなります。

 判断力がない上司についた部下は悲惨です。

 仕事上の決済を求めても、細かい説明と不要な資料提出ばかりが求められ、なかなか決済がもらえず、仕事が前に進まないという事態に陥ります。

 判断力は原理原則をきちんと勉強しているかで決まります。

 もちろん実務に裏打ちされた豊富な経験も不可欠ですが、例えば投資案件の判断であれば財務内容や収益性を正確に分析できるかどうかという実務的な能力とともに、自社のミッション、ビジョン、理念や経営の原理原則にのっとった判断力が求められるのです。

 逆に困るのは、判断は速くても、判断基準が自分のつたない成功体験であるという上司です。

 そこで昇進を目指す人は自社のミッション、ビジョン、理念を普段から体現するとともに、経営の原理原則を普段から勉強しておくことが大切です。

 役員クラスになると会社の舵取りが主な仕事になるので「世の中が見えているか」が重要になります。

 いろいろな人と付き合って見聞を広げたり、新聞を一面から読んで自分に今は直接関係ないような大きな記事も勉強しているような人物が好ましいでしょう。

「新聞を一面から読む」、「大きな記事を読む」ということは、このコラムで何度も述べているとおり、自分の関心を世の中の関心に合わせるという作業です。

 以上のような条件を完璧に備えた人はそうはいないので、経営者はある程度の条件を備え、かつ、前向きなやる気が出ている社員の中から昇進させる人を選ぶことになるでしょう。

 リーダーは時として部下に厳しいことを言わなければなりません。

 ただ言うだけではだめで、松下幸之助さんは人として相手の気持ちをおもんぱかる「人間観」が大切であると説いています。

 人はどういう時に喜び悲しむのか、それが分からない人はリーダーには向かないと言うのです。私もその通りだと思います。

(小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶)

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