
SNS戦略に力を入れようが、誰も見ない
“選挙の神様”とも呼ばれる久米氏だが、「自民党はもはや小手先の戦術や戦略によって選挙に勝てるフェーズにはいない」と突き放す。
「広報戦略というのは、良いものをより良く見せる効果はあっても、悪いものを良く見せる効果はないんです。政治家は夢を売ってなんぼ。国民が裏金問題をふくめ自民党に愛想を尽かしている状況では、いくらSNS戦略に力を入れようが、誰も見てくれません」
一方、自民党内部ではトップをすげ替えて党勢回復を図るべく、石破おろしが吹き荒れている。8月19日に総裁選挙管理委員会が開かれ、2027年9月の石破茂総裁(首相)の任期満了を待たずに総裁選を行う検討が始まった。
70年の党史上、総裁選の前倒しは前例がない。実施には、国会議員と地方組織の代表者の過半数の要求が必要で、フローは不透明だ。
ただ逢沢一郎・総裁選管理委員長は、議員らへの意思確認は書面による「記名」方式となる見通しを示している。総裁選が前倒しされず、続投となった場合に、人事で冷遇されることなどを恐れ、前倒しへの賛成に二の足を踏む議員が出てくるかもしれない。
加えて、世論は石破おろしに否定的だ。朝日新聞社が8月16、17日に行った世論調査で、参院選の結果を受けて石破首相は辞めるべきか尋ねたところ、「辞めるべきだ」が36%(前回7月調査41%)、「その必要はない」が54%(同47%)と過半数を占めた。自民支持層では「辞める必要はない」は76%に上る。
党内と世論のズレについて、ある閣僚経験者はこう話す。
「裏金問題で党全体に迷惑をかけた萩生田光一元政調会長ら旧安倍派の連中が、えらそうに“石破いじめ”に走っている。だから石破さんは意地でも辞めないし、判官贔屓(ほうがんびいき)の世間の方々は自民党に不信感を抱いているんじゃないか」