自民党の岩盤保守層を固めた故・安倍晋三元首相
自民党の岩盤保守層を固めた故・安倍晋三元首相

本当の危機は“岩盤保守層”離れではなく…

 元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃氏も、かつての党の姿を「あらゆる人を抱え込む度量があった」と評する。

「自民党というのは、イデオロギーのある政党ではなく、日本の伝統を守るという思いで連帯した保守の総称。右寄りも左寄りも幅広いスタンスの議員が集う包括型政党で、多くの国民から信頼された百貨店的な存在でした」

 だが、社会も国民のニーズも多様化する中、ワンイシューを掲げて熱量の高い支持者を集める新興政党が台頭し、その在り方は時代にそぐわなくなった。だからこそ、7月の参院選で自民党が大敗した原因を「岩盤保守層が離れたから」とする見方には首をかしげる。

「岩盤保守層は、首相だった安倍晋三氏が一部の支持を固めただけで、限定的。本当の危機は“保守層”ではなく“支持層”が離れていること。この30年の間、日本経済は衰退と停滞を続け、近年はアベノミクスの弊害でもある円安と急激な物価上昇が起きている。政権の無策のせいで、国民の生活や将来が脅かされているという意識が一気に高まっています」(伊藤氏)

 公明党と連立を組むようになった99年以降、衆院選で「小選挙区は自民、比例は公明」と有権者に呼びかけるといった自公の選挙協力も、現状うまく機能しているとは言いがたい。公明党の比例票は、05年の衆院選での約898万票をピークに減少し、7月の参院選では521万票まで落ち込んだ。長らく自民党の選対本部事務部長を務めた久米氏は、この数字から、自公共倒れの状況を読み解く。

「公明党が票を減らす背景には、支持母体である創価学会の衰退はもちろん、自民党の集票力の低下があります。自民党支持者が自民党に投票しなくなっているのに、連立相手の公明党に票が回ってくるはずがない。自公連立解消がささやかれるのも当然ですが、ご破算にすれば両者はさらに票を減らし、悲惨な末路となるでしょう」

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