
第107回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)が5日に始まった。15日間にわたる熱戦は、グラウンドの選手たちだけでなく、アルプススタンドからの応援にも注目が集まる。高校野球応援歌の定番曲といえば、山本リンダ「狙いうち」、ピンク・レディー「サウスポー」、岩崎良美「タッチ」。現役の高校生からしたら、ともすると祖父母世代の昭和歌謡だ。なぜ応援歌として使われているのか? 音楽評論家で、野球専門誌に連載を持つほどの野球ファンのスージー鈴木さんに話を聞いた。
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山本リンダの「狙いうち」は1973年、ピンク・レディーの「サウスポー」は1978年、岩崎良美「タッチ」は1985年にリリースされた楽曲。令和のいまでも高校野球応援歌として使われ、実際、今夏の開幕試合の小松大谷(石川)、第2日の仙台育英(宮城)などの応援席からはピンク・レディーの「サウスポー」が鳴り響いた。
グラウンドの高校球児たちも応援歌を演奏する吹奏楽部の高校生たちにとっても、自分たちの父母、場合によっては祖父母世代の曲。なぜいまもアルプススタンドから鳴り響くのか? 高校時代、オーケストラ部でトランペットを担当していたというスージー鈴木さんは、「狙いうち」「サウスポー」「タッチ」などが使われる理由を、こう分析する。
「『狙いうち』『サウスポー』『タッチ』のほか、高校野球応援歌でよく聞くXJAPANの『紅』とかは、どの曲も短調、マイナーなんですよね。日本人は、特に昭和歌謡の時代にはマイナーを好んでいました。「♪パン・パン・パパ・パン」というシンプルなリズムに乗ったマイナーキーの応援歌が流れているというのが、高校野球においての一種のカルチャーになっている。新しい曲やメジャーキーの曲が流れると、どうもしっくりこないのだと思います。夏の高校野球の原風景ができあがっているということでしょう。今年で大会は107回。綿々と続く歴史の中で、夏の高校野球の甲子園で流れる曲はマイナーキーがしっくりくるのは、そういう理由だと思います」