応援歌はもっと自由に楽しく

 大会史上初めて午後4時に開会式が行われ、クーリングタイムの実施、試合前ノックの時短と選択制など大きく変わる時代に、スージーさんは、応援歌ももっと“自由に楽しく”と提案する。

「この10年間くらい私は、学校オリジナルの応援歌をつくればいいのに、と言い続けている。あてがいぶちのように与えられた楽譜、それこそ昔の『狙いうち』『サウスポー』『タッチ』『紅』だとかいう、高校生がリアルタイムで聞いたこともない曲をロボットのように吹き続けるのではなくて、もっと自由に楽しく、創造的に応援すればいいのではないかと思っています」

 そしてスージーさんは、“目指せ、「市船soul」”を掲げる。「市船soul」は、今大会にも出場する市立船橋(千葉)の伝説的応援歌だ。市立船橋に通う高校生が作曲した。このエピソードは「二十歳のソウル」として映画化され、作曲した高校生を俳優の神尾楓珠、音楽の先生役を佐藤浩市が演じている。

「『市船soul』は、試合中に演奏されると逆転劇が始まるという伝説もあって、有名な曲になりました。映画の中で、吹奏楽部の顧問の先生(佐藤)が、生徒が作った複雑な曲に対して、もっとシンプルにするべきと指導するのです。まさにその通りで、コンクールでもないわけですから、そこまでテクニックや複雑なアレンジもいらない。全楽器ユニゾンでいい。高校野球応援歌の究極は、もっと、自分たちで楽しんで作って、それを演奏するのがいいのではないかと、私はずっと持論を唱えてきました」

高校生の自由な発想で

 ただ、高校時代、オーケストラ部だったスージー鈴木さんは、“新たに曲を作るヒマなんてない”という事情も理解できると付け加える。

「オリジナルの応援歌をという意見には、異論反論があって、吹奏楽部は高校野球の応援がメインの活動ではなく、コンクールもあったりするから、真夏の炎天下に応援に駆り出されるだけでも大変。“オリジナルの応援曲なんか作っていられるか”という反論もある。でも、『市船soul』って、メロディーもめっちゃ短くて、ユニゾンで、シンプルなアレンジの曲。ああいうのでいい、ああいう方がいいんだと返したい」

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