夏休みの宿題のひとつ「自由研究」。最初から最後まで子どもが一人で取り組むのは難しいもの。わが子のひらめきを引き出すヒントを花まる学習会「スクールFC」で理科の授業を担当している川幡智佳さんにうかがいました。子育て情報誌「AERA with Kids2025年夏号」(朝日新聞出版)から紹介します。

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失敗も研究の一部 どう考えたかが大事
「雲に乗りたい」親はなんて答える?
中学年からおすすめ!最後までやりきる「3つの戦略」

失敗も研究の一部 どう考えたかが大事

「テーマを決めて、道具をそろえて、まとめて……自由研究には工程がたくさん。実験は好きでも、〈計画〉や〈まとめ〉は好きではないという子は多いです」

 そう話すのは、花まる学習会の川幡智佳さん。大人が適度にサポートしつつ、テーマやスケジュールの最終決定は本人に任せるのが、やる気を引き出すカギだそう。

 理科に興味がある場合、地元や旅行先で博物館・科学館の実験イベントやワークショップに参加してみるのもおすすめ。

「帰ってから、家にあるもので同じ実験をしたり、新しい提案を加えたり。少しのアレンジが自分なりの研究になり、旅先であれば地域の特性にも気づきます」

 やってみて、思うような結果が得られなくても大丈夫。

「途中経過や失敗から、どんなことを感じ、どう考えてみたのか。それが立派な研究結果です」

「雲に乗りたい」親はなんて答える?

 楽しい実験の後に、〈まとめ〉の考察や推測で苦戦する子はどうしたらいいのでしょうか。

「親子の会話を通して、お子さんの中にある思いや考えを引き出してみてください。言葉が出てこない子には『〇〇博士、今回の実験の目的は?』と、インタビュー形式で聞いてみるのもおすすめです」と川幡さん。

 その際に気をつけたいのは、“正解”にこだわらないこと。

「考察は自由でいいんです。たとえば、子どもが『雲に乗りたい』と言ってきたとき、大人は理屈で説明せず、『どんな形の雲がいい?調べてみよう』とまずは一緒に面白がってください。そういうご家庭のお子さんは、思いめぐらす力があり、予想することにとまどいがないです」

 また、理科の学びは、実験室の中だけのものではありません。

「夜空を見上げて、『今日の月はどんな形かな』と話すなど、何げない日々の声かけを意識してみてください。身近にあるさまざまなものを理科の視点で観察し、発見する力が伸びていくはずです」

中学年からおすすめ!最後までやりきる「3つの戦略」

1 具体的な計画を一緒にたてる
(1)テーマを決める(2)必要な道具を準備する(3)実践する(4)仕上げる(まとめる)日に分けて、それぞれいつまでにやるのか、一緒に計画をたてる。最後に日にちを決めるのは本人であることがポイント。

2 テーマを3つ提案して子どもが選ぶ
やりたいことがない場合、わが子の好きそうなテーマを3つ出してみる。親の提案自体を嫌がる場合は「〇日までにテーマを探す」ミッションを課し、SNSや図書館などでの探し方を指南する。

3 思い描いたゴールと違っても終わらせる
〈まとめ〉には見たこと、感じたことを書く。実験なら動画を撮っておいてその変化を書き、工作なら工夫点とその結果を書く。大人がインタビュー形式で質問すると、言葉が出やすくなる。

(取材・文/中村茉莉花)

松丸亮吾が小学生時代に取り組んだ「自由研究」の中身とは? 「やらされることや押し付けられることが苦手でした」
AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2025年 夏号 [雑誌]

朝日新聞出版

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2025年 夏号 [雑誌]
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中村茉莉花
ライター・編集者 中村茉莉花

編集者だった母の影響で、テレビのない家で何千冊もの本に囲まれ育つ。大学卒業後、フリーペーパー、新聞、オンラインメディアの記者・編集者を経て独立。おもにダイバーシティや旅、カルチャー、教育、ソーシャルイシューの領域で、東京を拠点に活動中。趣味はキャンプ、旅行、世界中の料理をつくってみること。