安全基準に達したのは
室温26度のキッチンで、冷蔵庫から出したばかりの鶏むね肉1枚にフォークで穴を開けて耐熱ポリ袋へ入れ、調味料(塩小さじ2分の1、砂糖小さじ1、酒大さじ1)をすり込む。10分間置いたら、ポリ袋の空気を抜いてしっかり閉じ、沸騰した湯へポリ袋ごと入れる。鍋のフタをし、すぐに火を止めて放置する。
鶏肉の大きさは300グラムで、鶏肉の一番厚い部分を「3センチ」と「3.5センチ」に分け、さらに熱湯の湯量も「1リットル」「1.2リットル」「1.5リットル」「2リットル」に分けて検証した。中心温度は複数箇所を測定し、安全基準をクリアするかを見た。
「中心温度が安全条件を満たしていたのは、厚さ3センチの鶏むね肉で1.5リットルの熱湯の予熱で45分間火を通した場合と、2リットルの熱湯の予熱で30分間火を通した場合だけでした。厚さ3.5センチの鶏むね肉では、湯量を変えても安全基準に達しませんでした」
目視ではわからない
にもかかわらず、見た目に差異はなかったという。
「いずれも鶏肉の断面に赤みはなく、見た目から判断することが極めて難しいこともわかりました」(柴田さん)
では、低温調理の際、「厚さ3センチの鶏むね肉を、1.5リットルの熱湯につけて45分間、ないしは2リットルの熱湯で30分間放置すれば安全」かというと、違うという。
以前、冬に同様の検証を行った時は、室温が低く湯の温度も早く下がるため、湯量によって火の通りに差が出た。安全な基準まで火が通っているかどうかには、室温をはじめ、肉を冷蔵庫から出したばかりかどうか、鍋の厚みによる保温性、鶏むね肉が1枚なのか同時に2枚入れるのか、ポリ袋に入れずに直接湯の中に入れるのかなど、さまざまな条件で変わるのだ。
「もし、普段よくやる低温調理法があるなら、一度、肉の中心温度を温度計で測定することをお勧めします。もう一つの提案は、多少パサついても加熱をしっかり行って、おいしく食べる方法があるということです。たとえば、鶏むね肉を細かく割いて野菜などと和えたり、とろみのある餡をかけるなどするといいですよ」(柴田さん)
低温調理のむね肉の出来具合は、「見た目」からはわからない。自己流レシピで低温調理をしている人は、ぜひ注意してほしい。
(ライター・羽根田真智)
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