
「低温調理」で鶏むね肉もしっとりおいしく――。だが、自己流の「低温調理」には「食中毒」のリスクがある。厚生労働省、食品安全委員会、農林水産省、自治体などは、加熱不十分な鶏肉に対し注意喚起を促している。
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ネットレシピで鶏むね肉を「低温調理」
鶏むね肉といえば、低カロリーで高たんぱく、メタボ対策や筋トレに人気の食材だ。東日本に住む40代の女性が、ネット上のレシピを参考に鶏むね肉をはじめて「低温調理」した際は、感動すらした。従来のパサついた食感とは違い、しっとりジューシー、しかもヘルシー。いまではすっかり、作り置きの定番になった。
「低温調理」とは一般に、フリーザーバッグ等に入れた食材を、一定温度に保ったお湯に入れ、たんぱく質が完全に凝固しない程度の比較的低温で長時間加熱するなどして行う。専用の機器も市販されているが、冒頭の女性が利用しているのは、ネットで知った「沸騰したお湯につけ余熱で火を通す」という手軽なレシピだ。
ただ、このレシピ、「正解」がいまだわからない。肉を割っていかにも生っぽいピンク色であればレンジでチンするが、触った感じが微妙という時もある。しっかり火を通せば安全なのはわかる。でも「しっとりジューシー」は譲れない。「これまで大丈夫だったから」という根拠なき理由で、微妙な状態のまま食べている。
加熱不十分な鶏肉の食中毒リスク
実は、レアな鶏肉は非常に危険だ。加熱が不十分だと、食中毒が起こる可能性がある。
実際、今年6月に、あるラーメン店で「半生」状態の鶏チャーシューが提供され、食中毒が出たことが話題になった。Xには赤みのある鶏チャーシューの並ぶラーメンの写真と、「体調不良」に陥ったことが投稿された。投稿は一気に拡散され、『低温調理』『鶏チャーシュー』『カンピロバクター』といったワードもトレンド入りした。保健所は、通報があった8グループ16人のうち調査のできた7グループ8人には下痢、頭痛、発熱などが見られ、原因は「加熱不十分な鶏チャーシューを含む食事」と発表した。
安全に食べるために、肉には加熱条件がある。食中毒を起こす細菌やウイルスの多くは加熱で死滅する。重要なのは「中心温度」と「加熱時間」で、目安は「75度で1分」。同等とされるのは「70度で3分」「69度で4分」「68度で5分」「67度で8分」「66度で11分」「65度で15分」といった塩梅だ。鶏肉の低温調理でよく使われる63度の場合は、食品安全委員会がホームページで「30分以上の加熱が必要」としている。
ここに注目すべき調査がある。