石破茂首相「なめられてたまるか」発言
その先にあるのは偶発的な日中間の衝突だ。それを機に、アメリカの対中最強硬派が、「台湾有事」だと叫び、先週紹介したヘグセス国防長官の言葉のとおり、日本がその最前線に駆り出される。そのシナリオが見えるのに、日本の国民はそんなことは無想だにしない。マスコミもせっせと中国批判の記事を書いては、嫌中意識に染まった国民の歓心を買っている。
そうした状況を見ると、日本が率先して台湾有事誘発に貢献することまで想定せざるを得ない。そして、それを避ける道がない。
絶望的な状況だ。
しかし、そこに微かな希望の光が差してきた。
それは、トランプ米大統領やその側近たちの「驕り」である。
彼らは、日本人は、アメリカに無条件に従属していると考えている。日本側もそう思わせる言動を続けてきた。トランプ関税が発表されても、「報復しない」と宣言した。アメリカは、関税協議では、期待をもたせたかと思えば日本を突然悪者扱いする。報復すればただでは済まないと脅しをかける。日本に原爆を落としたことも正当化する発言をして日本人の神経を逆撫でする。日本は西太平洋で、最前線で戦うと事実上の命令を発する。
これらの行為は、日本を独立国とはみなしていないことを示し、日本はアメリカの奴隷であるという認識に立ったものだとしか考えられない。
だが、それでも、日本は、米側と「ウィンウィンの結果を目指して誠意を持って交渉する」と従順な姿勢を変えない。
中国もEUもカナダもインドも対米報復を実施したり、その予告をしたりして闘っている。日本が馬鹿にされるのは当然だろう。
アメリカの驕りはどんどんエスカレートしているように見える。はなはだ不愉快なことだが、ここまで馬鹿にされれば、少しはアメリカに対して敵愾心を燃やす人が出てもおかしくない。
そう思っていたら、石破茂首相から「なめられてたまるか」という発言が出た。
これを聞いて、「そうだ、そうだ!」「石破がんばれ!」となるのかと思ったが、違った。
中国では、アメリカの145%の追加関税に対して125%報復関税を宣言した習近平国家主席に対して、中国国民から圧倒的な支持の声が集まった。カナダでは、カーニー首相がアメリカと闘う宣言をしたことで、不利だった選挙で逆転勝利した。
ところが日本では、そうはならない。「どうせ口だけ」と言うのはまだわかるが、「アメリカを怒らせてどうするんだ!」「アメリカとうまくやれない首相は失格。即刻退陣せよ」というような批判が飛び交った。