
6年前は安倍氏が自公を“はしご応援”
今回改選となる19年に当選した現職の候補は、自民の加田裕之氏、公明の高橋光男氏の2人。6年前は維新の勢いが強く、維新候補の当選は確実視され、実質的に加田氏、高橋氏と立憲民主の女性候補の3人が2議席をめぐって激しく争った。安倍晋三首相(当時)が三宮の繁華街で加田氏を応援した後、100メートルほど離れて待機していた高橋氏のためにもマイクを握るという異例の応援を繰り広げ、高橋氏が約50万票で2位、加田氏が約47万票で3位となり、立憲民主候補の猛追をかわして当選している。
前出の公明県議がこう話す。
「兵庫県内で公明の基礎票は30万票に届かない程度でしょう。兵庫選挙区が改選数3になり、うちが立てるようになってからは、自民からも票が回ってきていた。その段取りをしてくれたのが、元自民幹事長の二階俊博氏。その采配で、高橋氏のために二階氏とその親族が骨を折って業界を集めて講演会を開催してくれ、その票があったから当選できていた。しかし、二階氏は政界引退し、公明党が頼りにしていた二階氏の親族もお亡くなりなった。今回は自民も苦しく、公明独自でやらねばならない。うちにとってある意味、自民党がライバルで、与党同士のつぶしあいという展開にもなりかねない」
では、自民はどうかというと、自民県議がこんな話をする。
「加田氏は裏金で名前が出た旧安倍派議員。昨年の衆院選では裏金で名前が出た大物議員が続々と落選したものの、そろそろ影響は少なくなったかと思っていたが、都議選でも『裏金議員』に対して厳しい結果が出た。活動していても、自民や裏金に対しての有権者の目はまだ非常に冷たいものが感じられる。正直、公明の支援をする余裕はありません」
19年の選挙でトップ当選したのは維新の清水貴之氏。清水氏は昨年11月の兵庫知事選に出馬したため失職し、その後、今回の参院選に出馬の意向を示したが、結局辞退。急きょ新人の吉平敏孝氏が擁立された。維新の県議は、険しい表情で話す。
「現場で活動していると、維新のこれまでのトレンドが、国民民主や参政に変わってしまったように感じます。維新のおひざ元の大阪でも苦戦のようで、兵庫県でもなかなか流れに乗れていない。苦戦です」