「DeNAの良いところは新しいものを取り入れると共に、地域や伝統も大事にする。応援団と連携して、四球で打者走者が一塁へ向かう際には『横浜市歌』を奏でる。地元を意識した素晴らしい試み」(シーズン席を持つDeNAファン)

『横浜市歌』は、1909年の横浜港の開港50周年記念祝祭で初披露されて以来、歌い継がれている(横浜市ホームページ)。「横浜市民なら誰もが歌える」と言われ、『秘密のケンミンSHOW極』(日本テレビ系)で特集されたほどだ。

「演出が大きくなったことで『古き良き野球が失われる』という声も聞かれる。しかし今や野球は文句なしのナンバーワン娯楽”ではない。MLBや他エンタメなど、ライバルは多いですから……」(DeNA関係者)

 多くの試みのベースには、「野球の現状に対する危機感」がある。その思いが伝わっているからこそ、NPBも「試合に支障が及ばない範囲」で許可・承認しているのだろう。

「DeNAの演出が好評なのはバランス感に優れているから。新しく派手なことばかりでなく、古き良きものも大事にする。他球団や他競技にとっても、大きなヒントになりそうだ」(スポーツマーケティング関連会社関係者)

 DeNAは昨年の主催試合に約236万人を動員、1試合平均で約3万2千人を記録した。これは球団取得初年度の12年の約2倍に当たる恐るべき数字。可能にしたのは顧客満足度を徹底的に高めたことであり、球場演出も大きな要因だった。

「野球は新しい時代に突入している。生き残るためにはファンを満足させることしかない」(スポーツマーケティング関連会社関係者)

 世間の物価高騰と同様、野球観戦時のチケットや飲食、グッズ代金も上がり続けている。今後も球場へ足を運んでもらうには、試合前後を含めた滞在時間を徹底的に楽しんでもらうしかない。NPB各球団には、「できることは何でもやる」という工夫と覚悟が、今まで以上に必要となりそうだ。

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