直近では、塩貝健人(慶應義塾大→NECナイメヘン)がいる。國學院久我山高校でチームを選手権出場に導き、慶應義塾大学では1年時から出番を掴んで得点を量産した本格派ストライカー。2024年1月には横浜F・マリノスへの特別指定選手認定と加入内定が発表されると、大学2年になった直後の2024年4月にJリーグデビューを飾り、リーグ戦7試合に出場して1得点をマークした。

 だが、そこで将来プランを再設計。同年8月に横浜FMとの特別指定及び加入内定を解除してNECナイメヘンと契約してオランダへ渡った。迎えた海外1年目の2024-25シーズンは途中出場が主ながらリーグ戦25試合に出場して5得点1アシストをマーク。今夏のザルツブルク移籍はメディカルチェックで故障が判明して破談となったが、欧州内での評価は確実に高まっている。現在20歳。今後の日本代表入りも期待されている。

 こうして振り返ると、まだ現役選手が多い中ではあるが、「大学→欧州直行」の成功例は少ないと言わざるを得ない。また、大学ではなく、高校から直接、欧州へと渡った選手には、伊藤翔(中京大中京高→グルノーブル)、宮市亮(中京大中京高→アーセナル)、木下康介(横浜FCユース→フライブルク)、チェイス・アンリ(尚志高→シュツットガルト)、福田師王(神村学園高→ボルシアMG)、吉永夢希(神村学園高→KRCヘンク)、小杉啓太(湘南ベルマーレユース→ユールゴーデン)、高岡伶颯(日章学園→サウサンプトン)などがいるが、こちらも“まだこれから”の選手が多く、小杉が成功例と言えるが、現状では苦しんでいる選手の方が多い。

 この評価を、内野が覆すことができるか。吉田麻也と内田篤人が、サッカー番組での対談内で「海外挑戦に最も必要なことは?」の問いに「根性」と口を揃えたが、果たしてどうなるか。日本サッカー界全体においても、この「欧州直行」の成否が、今後の強化の鍵を握ることになる。

(文・三和直樹)

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