

2日放送の「きょうの料理」(Eテレ・よる9時)は、「土井善晴のふつうにおいしいもん」。今回は「ゴーヤーチャンプルー」など、暑さを吹き飛ばす栄養満点な夏の「炒めもん」2品を紹介する。料理研究家・土井善晴さんのインタビュー記事を再掲する(この記事は「AERA dot.」に2017年11月11日に掲載されたものを再編集したものです。本文中の年齢、肩書等は当時のもの)。
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NHK「きょうの料理」で“伝説”とも称されている料理研究家の土井善晴さん(60)による放送回「塩むすび」。シンプルな料理であっても深い指導が視聴者を驚かせた。その背景とともに料理家としての信念を聞いた。
「きょうの料理」に初めて出演したのは30年前。父・勝が講演先で倒れ代役として。とにかくピンチを乗り切るしかなかった。非常な緊張感のなか薄焼き卵を焼いたのを覚えていますね。
私が出演して最も反響が大きかったのは「塩むすび」の放送回ですわ。材料は米と塩だけ。料理で一番大事なのは手を洗うことなので、料理以前の、手の洗い方や手を洗う意味についてしっかりお話ししました。最近ではラップを使ったり、ご飯を冷ましてからにぎるなど約束事を守らないことも多い。熱々のご飯のきちんとしたむすび方の手順もきっちりお伝えした。そうして作ったものは、おいしいだけでなく安心でもあるんです。私にしてみれば当たり前のことばかりでしたけれど反響は大きかったですね。
「きょうの料理」のスタジオには、子どものころ父にもよく連れて行ってもらいました。当時は王馬熙純先生や飯田深雪先生などが出られていて、一緒に香港に旅行に行くなど家族ぐるみのお付き合いもありました。帝国ホテルの村上信夫さんとも父は懇意にさせていただいていて、当時の先生方はそれぞれに確固たるものがあり尊敬し合っていましたね。今は様子が変わり、料理がみんな似てきているような気がします。私は影響を受けたくないので、流行の料理は見ないようにしています。その代わり、伝統や社会を見ています。私の役割は皆さんに元気に、幸せになっていただくことだと思っていますから。当たり前の中にある豊かさや、手作りの大切さを引き続き伝えていきたいと思っています。
(編集部・石田かおる)
※AERA 2017年11月13日号
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