さかなし・さち/1971年生まれ。専門はイラン政治、中東地域の政治・国際関係、地政学とエネルギー
さかなし・さち/1971年生まれ。専門はイラン政治、中東地域の政治・国際関係、地政学とエネルギー
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 イスラエルによるイラン攻撃に続き、米国がイランの核施設を攻撃。その後の停戦合意と、混迷の続く中東情勢。今後どうなるのか。日本エネルギー経済研究所 中東研究センター長・研究理事の坂梨祥さんに聞いた。AERA 2025年7月7日号より。

【写真】イランの最高指導者ハメネイ師とアメリカのトランプ大統領

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 トランプ政権はイランと核交渉を進めていましたが、イスラエルがイランに奇襲攻撃を仕掛けました。もしそのまま交渉が進めば、イスラエルが受け入れられない条件で合意される可能性があったからでしょう。加えて、イスラエルによるハマスやヒズボラに対する徹底攻撃や、シリアのアサド政権というイランの同盟相手が崩壊したことで、弱体化したイランを一気に叩き、長年の脅威を無力化するという狙いもありました。ただ、地中深くに建設されたフォルドゥ燃料濃縮施設は単独では破壊できないので、最初からアメリカの協力を想定していたと思います。慎重だったトランプ大統領も、イスラエルの奇襲作戦があまりに鮮やかだったので乗り気になり、結果、イスラエルの狙い通りに物事が進みました。

 長引く経済制裁で国内が疲弊して、イラン国民の生活も追い詰められています。経済が弱体化することで、イスラエルもイラン国内に情報提供者を作りやすくなります。実際、軍のトップが次々狙い撃ちされたのも、内部情報が筒抜けだったからです。そして経済的弱体化に対する市民の抗議活動は何度も鎮圧され、体制への不満が高まっていた。イスラエルはそういう状況を作り出した上で、イランに対する攻撃に踏み切ったということだと思います。

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