イランの最高指導者・ハメネイ師(左)、アメリカのトランプ大統領(写真:AFP/アフロ)
イランの最高指導者・ハメネイ師(左)、アメリカのトランプ大統領(写真:AFP/アフロ)

 2010年以降、イラン国内で核科学者の暗殺が立て続けに起きました。実行犯はイラン国内にいたと言われています。かなり以前からイスラエルによる作戦を実行する人がイラン国内にいた可能性はありますが、その数は近年増えていて、軍の幹部や核科学者の居場所などが非常に正確にイスラエルに把握されるような状況が生まれたのだと思います。

 イランに対するイスラエルとアメリカの攻撃を他の中東国は表向き非難しているものの、裏側の事情は複雑です。多くの国が経済発展や“ポスト石油”の時代を見据え、特に政府レベルでは、イスラエルと関係を強めたいという思惑もあるのです。イスラエルに敵対するイランが強大化することは、近隣のアラブ諸国にとっても脅威です。だから、心の中ではイランの弱体化に安堵している国も少なくないのです。

 湾岸の産油国は、脱炭素の流れの中で“ポスト石油”の新たな経済モデルが求められている状況です。そうした新しい経済を育てるには、地域の安定が大前提です。だから、イランとイスラエルの紛争が拡大して巻き込まれることは避けたいというのが本音でしょう。日本の原油の9割以上が中東から輸入されており、日本にとっても中東の安定は極めて重要です。日本はイラン、イスラエル、アメリカなど紛争当事国との良好な関係を生かし、外交的働きかけを続け、停戦の維持と中東の安定化に尽力することが重要だと思います。

(構成/ライター・濱野奈美子)

AERA 2025年7月7日号

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