
7月3日公示の参院選。最大の焦点になりそうなのが物価高対策だ。与野党の公約の特徴は、大きく「給付か減税か」あるいはその組み合わせに分かれる。どう向き合えばいいのか。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストに聞いた。
* * *
参院選をめぐり、石破茂首相が6月に「国民1人当たり2万円の現金給付」を公約に掲げる方針を表明した数日後。第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さんは、いち早く給付総額を約3.1兆円と見積もったうえで、「ここから消費に回る金額は、ごく小さいものになるだろう。消費刺激が乏しいにもかかわらず、参議院選挙前という事情もあって、再び給付金の配布が繰り返されてしまった」と厳しく批判するリポートを発表した。その真意はどこにあるのか。
「石破さんはおそらく、減税も現金給付も本当はしたくないんじゃないかと思うんです。しかし与党内にも減税論は根強いため、選挙に対する危機感に押されて給付の公約を受け入れたのではないでしょうか。問題の根深さはそこにあります。つまり、もともと財政再建論者だった石破さんのような政治家がトップの座にいても、従来型のバラマキに『NO』が言えない日本の政治体制そのものが、『重い病』なのではないかと感じています」(熊野さん)
自民党の参院選公約は、①国民1人当たりに2万円を支給②子どもと住民税非課税世帯の大人に1人2万円を加算する――との内容だ。今年5月1日時点の日本の人口(概数で1億2334万人)、18歳以下の人口(1708万人)、住民税非課税世帯(1381万世帯〈推計〉)をもとに熊野さんが給付額を導いたところ、個人には2超8084億円、世帯には2762億円(簡易的に世帯1人で計算)、合計3兆845億円(約3.1兆円)が支給される見込みと分かった。
では、この給付金支給がどれくらいの消費支出の押し上げに寄与するのか。
内閣府が2020年5~7月に実施された特別定額給付金の消費増加効果を家計簿アプリから調べたところ、給付額の22%程度だった。これを今回の限界消費性向として当てはめれば、名目消費支出の押し上げは6800億円。これは名目GDP比0.1%ポイントに相当し、「ごく小さな押し上げにとどまる」というのが熊野さんの見立てだ。